1週間ほど試乗させていただいたのでインプレッション
先日、AUDIさいたま新都心さんから、最新のAUDI A4 AVANTをお借りして、1週間ほど市街地と高速道を試乗させてもらいました。
2年前にも、当時最新だった AUDI A4 AVANT 35 TDI(ディーゼル) advancedをお借りしてインプレッションを書きました。
今回は、A4という機種の最新型でありながら、このモデルの最終型とも言えるクルマでした。
クルマ好きの方ならご存知かと思いますが、実はA4というモデルは本国ドイツではフルモデルチェンジの時期を迎えており、モデル名も整理されてA5という名前に変わるということなのです。(アウディのラインナップとして、奇数名をエンジン、偶数名を電動車にするようです。)
そんな背景もありながらも、熟成し切った最終型を乗る機会を得ましたので、堪能させていただきました。
そのインプレッションをまとめたいと思います。
試乗車のグレード
お借りしたクルマのグレードはこうです。
グレード: 40 TDI(ディーゼル) advanced S line
駆動方式: quattro
ミッション: 7速Sトロニック
前回は、今回と同じディーゼルエンジンでした。しかし、FFかつS lineではないノーマルグレードでしたので、その差もあるのかなと思います。
詳細はこちらをご覧ください。 AUDI A4 AVANT ホームペページ
A4 40 TDI QUATTRO とはどんなクルマ?
このクルマの特徴は、最新の4WDシステムとS lineにあると思います。
最新の4WDシステム
”AUDI QUATTRO ULTRA”
そう名付けたAUDI最新の4WDシステムは、リアディファレンシャルに内蔵された電子制御多板クラッチによる前後トルク配分とブレーキによる左右トルク配分が特徴的だと思います。
機構や作動説明に関しては、こちらの動画を参照させてください。
こちらの動画では、number 12が Quattro Ultraの説明になります。
S line とは?
このクルマはS line。
動的な仕様変化はわかりませんでした。しかしデザインがカッコいい!
ノーマル仕様とS lineのエクステリアの違いを見ただけでも、明らかな違いです。
これはどっちか迷ったら、頑張ってS line 買いますよね!
エクステリア
エクステリアはこれにつきます。
”磨きがかかった洗練されたデザイン”
2年前のモデルからのマイナーチェンジモデルといいことで、基本的なデザインは変わっていません。ですが、S lineしようということもあり、よりカッコよく磨きがかかったエクステリアになっています。
グリルがハニカム構造でカッコ良いです。
このグリルの上の横一本のライン。すごく好きです。ノーマル仕様に比べて、締まっている印象があるのです。
バンパーサイドは、メッキが増えて高級感が増しています。
AVANTと呼ばれるワゴンスタイルは、相変わらずのスマートさです。
リア周りも大きな変更はありませんが、メッキの塗装が増えています。S lineの特徴でしょう。
控えめにクアトロのバッジがついています。
前回、片方がイミテーションだったリアのフィニッシャーは、やっぱりでした。
タイヤは、PIRELLI のCinturato P7でサイズは245/40/R18になります。前回のノーマル仕様に比べて、幅広低扁平タイヤということで、動的パフォーマンスを重視したサイズだと考えられます。
そして、ホィールのデザインが気に入りました。センター付近が奥まっているところや、放射状に太くなっているデザインが好きです。
エンジンは、前回と同じ、TDI、クリーンディーゼルエンジンを縦置に搭載。レイアウト的にも同じに見えます。
インテリア
インテリアの特徴はこうです。
・シンプルなデザイン
・高級感のあるインテリア
・居心地の良さを感じる
インテリア周りは、マイナーチェンジでは大きく変わっていない印象。
メルセデスやBMWがメーター周りを大画面液晶にしている現状、一昔前のイメージにはなっていますが、これはこれで正常進化としていいと思います。
ステアリングは、両サイドがディンプル加工されていて、滑りにくく指ざわりも非常によく、操作しやすかったと感じました。
ステアリングの下にS lineのバッジがカッコいい。
先日見たYouTubeの動画で、フットレストの位置が奥すぎるというコメントを聞きました。実際に乗ってみると全く気になりませんでした。体型の違いによるものなのでしょうか。
シフト周りは、シフトバイワイヤのシフトレバー。その周りには、電動パーキングとブレーキホールドのスイッチ、オーディオの音量ダイヤルのみでシンプルな構成です。マイナーチェンジ前と変更はありません。
メーターは、いくつかの表示パターンが選べます。
大きくて見やすいナビのモニター。
そして、ちょっと残念なのは、ドライブセレクトのスイッチの位置が遠すぎる。エアコンの操作パネルの下の左端にあって、手を伸ばさないと届かない位置にあります。左ハンドルならいいのですが、右ハンドル用に作らなかったのでしょう。
もしくは、ナビのモニターでのタッチ操作でドライブモードをセレクトして欲しいと言うことか?それでもモードの表示がモニターの左端にあるため、これも手を伸ばさないといけません。やはり残念ですね。
シートは、肉厚でしっかりとした作り。乗っている範囲では、疲れは感じませんでした。
背もたれに、S lineのマークが刻まれています。
座面と背もたれの中央部は、バックスキンのような生地を使用しています。これによって、旋回中でも体のズレがなくホールド性が高かったです。
ドアの内張もバックスキン仕様で高級感があります。
リアシートも同様のバックスキン仕様。
居住性は十分です。長身の自分でも頭や膝周りに余裕がありました。
中央にエアコンの操作パネルと吹き出し口、シートヒーターのスイッチがありました。その下には、USB電源ポートが装備されています。
背もたれを倒すと、肘掛けなのですが、、
カップホルダーが小さい。小さい紙コップくらいのサイズでしょうか?小さすぎません?
荷室はマイナーチェンジ前と変わらずで広いです。
リアシートを倒すと、広大な荷室になります。タイヤや自転車の運搬も余裕でできそうです。
試乗インプレッション
特筆すべきは、
”スポーティな走りと高速の安定感”
と言うことができると思います。
具体的に良いところ、悪いところをまとめてみますとこうです。
・一体感のあるハンドリング
・気持ちのいい旋回姿勢
・パワフルで胸のすく加速感が味わえる
・高速での安定感
・フラットな加減速時の車両姿勢
・硬質で収まりの良さはあるものの、やや硬めの乗り心地
・アクティブレーンアシストによるステアリングフィールの悪化
・アイドルストップ時ブレーキホールド作動中に発進する時のもたつき
・断続的なADAS制御の減速フィール
良いところ
一体感のあるハンドリング
ハンドルの切り始めから、クルマがしっかり反応することが素晴らしい。
そして、ハンドルの切りはじめからハンドルからのしっかりとした反力感と共に、ロールとヨーが発生していき、切りましていくごとにリニアに挙動が深まっていきます。
やはりこの一体感のあるハンドリングがAUDIだなという印象です。
しかしながらこの感覚が得られるのは、操舵支援系のADAS機能であるレーンアシスト機能をオフにした上での話。
レーンアシスト機能をオンの話は、”悪いところ”で解説します。
気持ちのいい旋回姿勢
高速ランプでの旋回姿勢がこれまでにない感覚で、すごく気持ちが良かったのです。
4輪全てに接地感が高く、路面に吸い付くフィーリング。グイグイ曲がる感じと、出口で加速するとリアからも押される気持ちの良さ。
所有しているS4の旋回姿勢ともまた違います。
クワトロの前後トルク配分とブレーキによる左右トルク配分の効果による効果だろうと思います。ブレーキの制御効果がより出ている気がしますね。
パワフルで胸のすく加速感を味わえる
前回同様のディーゼルターボエンジンは、トルクフルなエンジンで、アクセルを踏み込むと、背中を押しつけられるような力強い加速感を感じます。
直進での加速はもちろんのこと、コーナーの出口での加速時には本当に気持ちのいい加速をしてくれます。
AUDIらしい高速での直進性と安定感
自分の所有している旧モデルのS4ほど、4WDのトルク拘束性は感じません。しかしながら、高速を走るとやはりクワトロらしい直進性と安定感を感じます。
フラットな加減速時の車両姿勢
前回の試乗は、FF仕様だったので、加速中のピッチ挙動が気になっていました。
今回のクワトロ仕様は、加速のみならず減速においてもフラットな姿勢を保っていて、安心感を感じました。
悪いところ
いくつか気になるところがあったので、あげさせていただきます。
硬質で収まりの良さはあるものの、やや硬めの乗り心地
素晴らしい旋回性能や安定性を見せる反面、乗り心地は硬めだと感じました。
よく言えば、硬質で収まりの良い乗り心地なのですが、悪く言うと市街地走行レベルの50km/h以下程度だと、路面によってはゴツゴツ感、突き上げ感があります。
ただクルマのコンセプトと考えると、スポーツ寄りのセッティングとも言えます。スポーツサスペンションとカタログにある事、低扁平率のスポーツタイヤなど考えると、ノーマル仕様に比べてこの乗り心地になるのは致し方ないところかなとも思います。
しかしながら、都市部での使用頻度が高い地域では、硬すぎると感じるかもしれません。
可能性があるとすると、このクルマ自体走行距離500kmの新車だったことを考えると、足回りの部品が馴染んでいなくて、サスペンションの動きが本来の動きをしていなかったことも考えられますね。
アクティブレーンアシストによるステアリングフィールの悪化
操舵系のADAS機能である、
”AUDIアクティブレーンアシスト”
これがステアリングフィールに悪影響を及ぼしていると感じました。
レーンアシスト機能をオンにしていると、操舵アシストのマップが切り替わっている感じがします。オフの状態に比べて、操舵中立付近の操舵力が軽くなる設定になるため、ハンドルが切れすぎてしまって、クルマの挙動との一体感を感じられなくなるのです。
レーンアシスト機能自体が、レーンを外れようとした時に操舵反力を強めて切り戻す方向に制御するため、操舵中立付近はあえて操舵反力を減らしているのかもしれません。
そうであっても、オフの状態で実現できていた一体感が損なわれているのは残念なところです。
加えて残念なところが、このレーンアシスト機能がデフォルト設定になっていること。ドライバーが意思を持って切らないと、ずっとこのレーンアシスト機能がオンになり続けてしまうのです。オフにしたまま、エンジン始動するとこのメッセージがメーターに出ることからもわかります。
一般のお客さんは、それほど理解せずにデフォルトの状態で乗ることが多いでしょうから、一体感のあるハンドリングを感じる機会が少なくなってしまいます。
この状態を見ると、ステアリング関係の開発者のせめぎ合いを想像します。
一体感のあるハンドリングを目指してステアリング担当がセッティングをしたものと、レーンアシスト機能担当がハンドリングよりはレーンアシスト機能に特化したセッティングをしたものが存在する。そして、後者が機能的に優先されてデフォルト設定になり、前者はせっかく気持ちを込めてセッティングしたのに、日の目を見る機会が少なく悔しい思いをしている。そんなことを思いました。
先日レンタカーで乗ったヤリスも同じような仕様だったことを考えると、そう言う潮流というか時代なんだなあと少し寂しく感じています。
アイドルストップ時ホールドアシスト作動中に発進する時のもたつき
前回のFF仕様の時は、ホールドアシストの解除フィールはよかったのですが、このクルマは、引っ掛かりを感じました。
ホールドアシストをオフにしてブレーキペダルを離すと、強めのクリープがあることから、保持するブレーキ圧が高いのかとも思いましたが、それもFF仕様と同じはず。なんでしょうね?
また、アイドルストップ時にホールドアシストが作動中に発進したい場合、トルクの応答遅れがあり、もたつきを感じます。エンジン始動が遅くクリープが復帰するのが遅いのか?解除フィールも影響しているのか?だと思います。
断続的なADAS制御の減速フィール
加減速系のADAS制御、
”アダプティブクルーズコントロール&トラフィックジャムアシスト”
先日トヨタのヤリスの同様の制御を体験しただけに、ちょっと残念な感想でした。
特に低速で前走車に追従するようなシーンで、ブレーキの制御が荒く断続的。結果、減速度が変化して、きゅうに前走者との車間が詰まって不安を覚えました。
ハイブリッド車ではないので、ブレーキシステムの限界の部分もあるとは思いますが、少し時代遅れな制御に思えました。
総じて
まさにスポーツワゴンという印象のクルマでした。
動力性能 :◎ 乗り心地:△ ハンドリング:◎
日常ユースがメインというよりは、高速移動で使いシーンが多い方にはうってつけのクルマだと思います。
今回の試乗記は以上です。