冬と言えば雪ですね
ここ数日の寒冷地で交通障害のニュース
ここ数日、寒波の影響で、日本海側は大雪で交通障害などいろんな影響が出てくる時期になってきました。
自動車会社に勤めていた自分にとって、この時期寒冷地テストのスタートの時期でした。12月下旬から3月頭まで北海道に長期出張をして、雪上のテストコースを実車テストをしていました。
なので、福岡県出身、埼玉県在住ながらも、長年寒冷地で長期間過ごしてきた体験からして、寒冷地の恐ろしさや怖さは理解しているつもりです。地吹雪で視界が無くなったり、-30℃以下の極低温など、厳しい冬を体験してきました。極寒の地で生きていくことは、大袈裟に言えば生死が隣り合わせということを肝に銘じていくべきなんだなあとずっと感じていました。
そんな反面、クルマ好きが雪道で楽しいのは?
やはり、車の運転なんです。滑るからこそ、滑らないようにコントロールしたり、滑っても挙動を立て直したりなど、征服感を感じることができるんです。
雪道での走行時間は会社の中ではかなり多いと自負していましたし、その楽しみをすごく痛感していました。
冬になると思い出すこの2台
そんな自分にとって雪道というと4WD。ということで、この時期になると思い出す2台の4WD車についてお話しします。
それは、三菱 ランサーエボリューションX。
(※画像は三菱自動車ホームページから引用)
そして、SUBARU WRX STI です。
(※画像はSUBARUホームページから引用)
この2台の車が会社に身近にあり、割と容易にテストコースで乗ることができたので、頻繁に乗る機会がありました。
この2台は、おそらく同じ目標を抱きながらも、全く違う手法でそれを成し遂げ、全く違うドライブフィールながら、双方とも楽しくて仕方がなかったという感想を持っていました。
まずは技術的な比較から
この2台の4WDシステムの違いについて、表にまとめてみました。オレンジの部分が、特徴的な部分になります。
ランエボXの特徴
なんといってもAYCと呼ばれるリアの左右トルク配分機構ですね。
今となっては、多くの車両で適用されている技術ではありますが、ランエボが先駆者と言っても過言ではありません。
機構については、わかりやすい解説のある動画を見つけましたので、参照させていただきます。
WRX STIの特徴
特徴は2つ。
・リア寄りの前後トルク配分による旋回性能の向上
・モード切替MANUALモードを設定して、ドライバーがセンターデフの締結力を選択可能にした。
というところでしょう。
ドライブフィールの違いは?
ランエボXの印象
なんなのこれは??制御技術でここまでできるのか!!と思ったのが最初の印象でした。
特徴①ステアリング操作に対して素直な車の動き
路面μの低い雪道では、ドライ路面に比べて、圧倒的に早く限界を迎えます。ステアリングを切っても曲がらなくなったり、アクセル、ブレーキを踏んでも、加速しなくなったり止まらなくなったり。
ただ、この車は、ステアリングを切り増しに応じてリニアに曲がってすごく扱いやすく安心感の高いハンドリングを実現できていると感じました。一般の方運転してもが不安なく雪道を走れるのかなと思います。
これは、リアの左右トルク配分がすごく効いていると思います。
特徴②限界域のコントロール性の高さ!
で、限界を越えると、なんなのこれは??って最初に思いましたね。
一定の横滑り角を自動で維持しているような感覚。リア駆動の車両を、上手なドライバーがドリフトアングルを感じながらアクセルコントロールしているのと似ていて。それを制御で自動でやっている感じ。今まで感じたことのない感覚でした。
カウンターステアを大きく切る必要がなく、自然に舵角が0度付近に戻す程度でいい、まさに「0カウンター」!!
色々調べてみると、ヨーレートフィードバックはやっていないというところから、リア左右輪の車輪速差を制限するフィードバック制御がかなり効いているのではないかと感じました。
自分は、車両運動に関する制御全般の業務をしていましたので、制御技術によって、ここまでの領域を実現できることに感銘を受けました。
ただ、制御で色々やってしまえば、ドライバーのコントロール領域を少なくしてしまうのも事実。社内の意見としては、「荒々しい馬を手名づける楽しみ」を個人的に大事にしている人が多くて、そういう人たちには不評な車になっちゃうんです。人間というものはワガママなものです。
でも、一般のお客様を考えると正しいと思うんです。
「意図通りに動いて、限界が来ても穏やかな挙動」
そう言った意味で、この車の制御技術は素晴らしいと感じました。
でも個人的に見てくれは全く許容できないデザインであったことは追記しておきます。
WRX STIの印象
質実剛健!!ドライバー中心!ドライバー次第で無茶苦茶楽しいと思ったのが最初の印象でした。
例えるなら、星一徹感。俺はこうだから、運転する側が学んで楽しみを見つけなさい的な印象。昭和的ですね。
ちょっと脱線、その時の背景
背景としては、そもそもFFやFR車の開発をメインにしていた自分にとって、4WDの走らせ方をよく理解していなかったこともあります。
コーナー侵入時に、しっかり荷重移動させてから、FFならアンダーステア、FRならオーバーステアに注意しながら、コーナー出口に向けてアクセルを踏んでいく。これがドライビングのセオリーでした。
4WDにおいては、その走らせ方を超えた走らせ方が存在していたことが当時わかったのです。
よくラリーでコーナーの侵入時の姿勢作りのために、一旦外向きにステアリングを切って内向きに切る、俗にいうフェイントの操作をよく目にします。これは、積極的にコーナーの侵入で大きく内向きの姿勢、つまり不安定な状況を作り出すことを目的にしています。普通に考えれば、オーバーステアになってスピンしてしまうじゃないか!って思うのですが、そこで4WDの場合アクセルを踏みこむことによって特に前輪を横に逃して車両を安定させながら、アクセルコントロールして車両の向きを維持したりコントロールすることができるのです。
これは、4WD開発を長くしていた同僚に教えてもらいました。
このことを学んだ上でのWRX STIの特徴はこうです。
特徴 アクセル操作に忠実な動き
ランエボと同じ感覚で、コーナーに侵入すると、こりゃ、曲がんないねー!ランエボの方が簡単だしね!って最初に思いましたね。
でも、先ほどの背景でお話しした後に乗ってみた感想としては、ドライバーに忠実、意のままを愚直に追求したシステムなんだなと感じました。
コーナ侵入で積極的に車両姿勢を内向きにして、アクセル操作で安定させてコーナーを脱出していく。
それをモード切り替えによって、ドライバーの意図通りに選択することができる。ドライバー側に選択肢、楽しみを与えること、これ自体は好きな人にはたまらないのではないかなと感じました。
自分が衝撃的だったモードは?
MANUALモードでのデフロック。これは衝撃的でした。
コーナー侵入でスピン寸前までクルマを内向きにして、すかさずアクセルを踏むと前輪を逃しながらもその姿勢のまま進んでいく。
これはドライバーの楽しみを与えてくれるモードなんだなと思いました。
2台ともアプローチは違えど、素晴らしい車でした
恐らくドライバーに忠実というコンセプトを乗った2台だと思います。それが、ステアリング寄りか?アクセル寄りか?の違いなんだなと。
同じ目標に向かって、適用した手段は違えどどちらも正解だと思うし、それは会社の歴史や哲学に通ずるものなのかなと思いました。
この2台が量産された時代から、さらに時は過ぎ、技術は進化しているとは思いますし、さらにこの2社がこの先電動化という時代の中で4WDの技術をどのように進化していくのか?すごく楽しみだな!と思う、2022年初冬でした。
また、この4WDの話題は続編を考えています。それでは!!
[…] 以前の記事、【4WDバトル ランエボ vs WRX】クルマ好きの方にココカゼ!! […]