あれ!エンジンがかからない!
ある日の朝、マイカーに乗りこんでふと足元を見ると、フロアマットに少し茶色がかったプラスチックの破片があるのに気づきました。
ちょっとやな予感がしていたのですが、普通にエンジンをかけていつもランニングをしている彩湖に向かいました。
ランニングを終えて、木陰でクールダウンした後、さて帰ろうかとエンジンを掛けたのですが、エンジンがかからない!
あれ?これはもしかして? やな予感は当たっていたのでした。
まずは結論をお話しします
結局、こういうことだったのです。
◆クラッチスイッチがクラッチペダルに突き当たる部分、ブレーキランプスイッチがブレーキペダルに突き当たる部分には、ブラスチックの部品が使われていて、ペダルの金属に嵌め込まれている。
◆これが経年劣化で破損し、フロアマットに破片が落ちる。
◆この部品がなくなったことによる故障事象としては、
・クラッチ側が壊れれば、エンジン始動できず。
(クラッチスイッチがクラッチを踏まれていないと判断し、エンジンを掛けないようにする)
・ブレーキ側が壊れれば、ブレーキランプが点灯しっぱなしで、最悪バッテリー上がりとなる。
◆どのクルマでも起きる事象である。(MT車は、クラッチ、ブレーキ、AT車はブレーキ)
◆ディーラーの方の方の話によると、この手の故障が増えているということ。
(近年の酷暑により劣化スピードが早くなっているかもしれない)
◆フロアマットにプラスチックの破片を見つけたら、早めにディーラーで見てもらってください。
プラスチックの部品の正体
破損した部品はこれです
そう、この破損したプラスチックはこうでした。
栗の実のようにも見える茶色ががったもの。初めて見たら、これは一体なんなんだ?と思いますよね?
樹脂が劣化して黄ばんだようになっています。経年劣化で、バラバラに破損したということなんです。
その部品の新品はこれです
新品は実はこんな形なんです。しかも真っ白。
エンジンがかからなくなった原因
そもそもエンジン始動はどんな仕様なのでしょう?
MT(マニュアル)車で、ギアが入った状態でクラッチを踏まないでエンジン始動すると、誤発進・急発進をしてしまい、周囲のクルマや人、壁などに衝突するリスクがあります。
そのために、一般的なMT車はクラッチを踏んでいない場合にはエンジンスタートさせない仕様になっているのです。
そして、クラッチを踏んでいるか否かを検出するために、クラッチスイッチという部品があり、クラッチペダルを踏む・踏まないを電気的に判定しています。
メカ的にどうクラッチ判定しているのでしょうか?
簡単な絵を描いてみました。これは、クラッチペダルを横から見た絵です。
クラッチスイッチは図の上部にあって、棒状の部品が可動します。(左側の細い棒)
棒が押されて引っ込むとスイッチが入って”クラッチを踏んだ”と判断します。
そして、今回壊れた部品は、クラッチペダルの上部に穴が空いていて、そこに挿入されています。(図では、右から左方向に押し込まれて付いています。)
実際の動作としては、以下のような流れです。
・クラッチペダルを踏むと、クラッチペダルが支点を中心に回転。(赤い矢印)
・すると今回壊れた部品が、正常ならばクラッチスイッチを押して、”クラッチを踏んだ”と判定。
この部品が壊れたら
しかし、この部品が壊れてなくなってしまっていると、クラッチスイッチを押すものがなく、その部分には穴が空いているので、いくらペダルが移動しても空振りしてクラッチスイッチを押せません。
なので、クラッチを踏んでいても、踏んでいないと判断してエンジンがかからない。
というわけなのです。
帰るために、エンジンをかけるのに四苦八苦
公園の帰りに、エンジンがかからなくなったので、どうにかしてエンジンはかけて帰らないととその場で四苦八苦。
クラッチスイッチを押しながらエンジンをかければエンジンがかかることは理解していたので、クラッチスイッチの場所を探しました。運転席足元に仰向けになって潜り込み、左手でクラッチペダルの上の方に指を突っ込みましたが、なかなか到達しませんでした。しかし、10分ほど格闘していると、クラッチスイッチに届く角度を見つけることができました。
シフトレバーがニュートラルの状態であることを確認して、クラッチスイッチを押しながらキーを回して、エンジン始動。やっと帰れるようになりました。
しかしながら、帰り道はもう、ど緊張。
そうなんです。帰り道の一般道でエンストしようものなら、道の真ん中で同じことをしてエンジンを掛けなければならないのです。ドアを開けてですよ。想像するだけでゾッとします。
1発エンストしたら地獄に落ちる!そんな恐怖の中、なんとか自宅に辿り着きました。
こんなに緊張したドライブも久々でした。RX-7で帰路の途中、ACGベルトが切れた以来でした。
部品取り付けも四苦八苦
その日に、ディーラーに行って部品を発注。自分で取り付けられないかとトライしてみましたが、手は入るものの、部品を押し込めるスペースがないのです。
諦めて、ディーラーの方にお願いして作業をしてもらいました。
難しいはずです。結局、クラッチペダルごと外してからではないと、つかなかったということです。
ブレーキペダルだとバッテリーが上がってしまいます
ここまでの話なら、クラッチペダルの話なので、MT車に限った話か?と思われるかもしれません。しかし、そうではなく全車に関係する話なのです。
それはブレーキペダルも同じだからなのです。今回壊れた部品は、ブレーキスイッチを押す部品として同じものを使っています
ブレーキランプを点灯する仕様
ブレーキペダルにも同様にブレーキスイッチという部品があり、そのスイッチによって、ブレーキを踏むとブレーキランプを点灯させるという仕様になっています。
今回壊れた部品が、ブレーキペダルにも同じようについています。
その部品が正常なら、ブレーキペダルを離した時、ブレーキスイッチを常時押し込んでいる状態になり、ブレーキを離したという判定になります。
ブレーキペダルにある今回の部品が壊れたら
しかし、壊れている場合、ブレーキを離した時でも、押し込む部品がなくなっているので、ブレーキスイッチが常時突き出している状態になり、ずっとブレーキを踏んでいると判定してしまうというわけです。
その為、ブレーキを踏んでいようがいまいが、常時ブレーキランプが点灯し続けるという状態に陥ります。
それに気づくことなく、走行、もしくは駐車・放置していくと、結果的にはバッテリー上がりにつながります。
このブレーキランプ着きっぱなしに気が付かないと、バッテリーを変えても変えてもバッテリーが上がるという蟻地獄に陥ってしまいます。
夜間に運転する機会が少ない方は気付きにくいかもしれません。
実は、自分も昔、ビートに乗っていた時にこの事象を体験していたのです。ブレーキ、クラッチの違いはあれど、今回が2度目、なんです。とほほ。
なので、今回もブレーキペダルの方かなと思っていたら、クラッチ側だったとは!想像力と危機察知能力が足りませんでした。
最近、この部品の故障が増えているとのこと
しかしながら、今回部品交換をお願いしたディーラーの整備士の方が教えてくれたのですが、
”最近、この部品の故障が増えている。特に夏場になると急に増えてくる”
ということでだったのです。
しかも、20年以上とかたったクルマならまだしも、10年程度でもこの事象が発生しているとのこと。この部品自体流用していて変わっていないところから考えると、近年の気候変動による車内の温度変化、ヒートショックが早期の劣化つながっているのではないか?と考えられます。
メーカーには対策仕様を求む
スイッチの接触部分にプラスチック樹脂を使うのは、金属同士が当たる接触音対策だとは思います。
しかしながら、このプラスチックの部品が壊れただけで、走行不能になってしまうこの故障事象は問題だと思います。
しかも、近年、故障頻度が増えているということは、ある自動車メーカーだけではなく、自動車メーカー全てに起きうる故障だと考えられます。
なので、そろそろしっかりとした対策仕様を考えてほしいと思います。
みなさんのマイカーも早めの対応を!
今回の故障事象は、みなさんのマイカーにも起きうる故障事象だと思います。
フロアマットに落ちた樹脂部品に気づいたら、クルマを使用せずに、ディーラーに相談することが一番かなと思います。
自分のような経験をしないように、十分に気をつけてくださいね。