最近、話題のビックモーターの問題
報道番組やワイドショーで今やもちきりの話題となっている、中古車販売のビッグモーターの問題。ざっとあげるだけでも以下のような問題が取り立たされています。
・保険金不正請求
・昨年末、保険金不正請求の内部告発に対して内部調査を実施したが、不正があったにもかかわらず、なかったと虚偽の報告を損保会社にしたこと
・保険申請時のサイン代筆
・上位者による部下に対するパワハラ・モラハラ
・除草剤を使用し店舗前の樹木を枯れさせた
もうブラック企業の最たるもの、それを遥かに飛び越えて、社会的倫理や道徳心はどこへやら、金儲けだけに走る集団と言えると思います。
ただ、一般の社員は、モラルや正義感を持っている方は多くいらっしゃったはずです。やはり、社長、副社長をはじめとした経営陣の経営理念、考え方がずれているというか本質をついていないというところが大きな問題だと思います。
具体的には、自らの金儲けに腐心して、企業として一番大事なお客様に満足してもらうことを忘れていることです。
こんな経営陣の考え方が企業の末端まで強制的に広がってしまっていることは明らかです。
自動車企業で開発を生業として会社人生を送ってきた自分にとって、先日のビッグモーター社の会見での前社長の兼重氏の発言に、すごく違和感というか憤りを隠せないのです。そんな思いをまとめたいと思いました。
会見での前社長の発言に対する憤り
ツッコミどころ満載の会見で、呆れるばかりでしたが、自分が最も憤りを感じたところが以下の2つです。
・ゴルフボールを使ったことがゴルフを愛する人への冒涜だと語ったこと。
・不正を知らなかったと胸を張って述べていて、不正をした従業員を刑事告発するとまで語ったこと。
「クルマを愛する人への冒涜」ではないのか!
車両の損害度合いを大きくして、保険会社から多く保険金を騙し取るために、ゴルフボールを使ったことを「ゴルフを愛する人への冒涜だ」と語った、兼重前社長。
この言葉には、呆れてものが言えないし、憤りを隠せませんでした。
ゴルフボールじゃない!!クルマだろ!!強いて言うなら「クルマを愛する人への冒涜」だろ!!と。
クルマを生業としている人間が言うセリフではないし、きっと彼にとってみれば、クルマなんかよりゴルフの方が大事だとしか思えません。自分としては、そんな人に苦労して開発したクルマに群がって金儲けなんてしてほしくないわけです。自動車業界に関わってほしくないとさえ思います。
もっと言うと、ピントがずれているのは、彼個人の本質がずれていることの一端が垣間見れるとも言えます。つまり最初に言った、自らの金儲けに腐心して、企業として一番大事なお客様に満足してもらうことを忘れている企業にしてしまった責任が彼にはあると思っています。
知らなかったはありえないし経営責任を放棄しているだけ
次に、保険金不正請求に関しては知らなかったし、不正をした従業員を刑事告発するとまで言ったこと。
企業の社長として知らないことを胸を張って言うこと自体が恥ずかしいことだとも思うし、昨今の企業では常識であるコーポーレートガバナンスという言葉は、この会社には一切存在しなかったことが如実にわかります。経営陣として、その大事さすら認識できていなかったと考えると、経営者失格と言われてもしかたないと言わざるをえません。
そして経営陣は知らないと言い張っていますが、にわかに信じがたいのです。それは雑誌でこの問題が随分前から取り沙汰されていたこと。ニューモデルマガジンXという雑誌があって自動車業界の人なら必ず読んでいる雑誌だと思います。新車のスクープがメインの雑誌なんですが、自動車関連企業の不正やスキャンダルの記事も多く載っています。その雑誌には随分前から、ビッグモーター関連の問題がずっと記事になっていました。
この雑誌をクルマを生業としている人だったら読まないわけがありません。自分の会社は、創業者の自分にとって大切な子供なはずなのに、雑誌にあーだこーだ叩かれたら、万が一本人が読まなくても、周りの人(社長仲間、関連企業、下請け企業の人々)から否が応でも耳に入ってくるはず。本当に知らなかったとしたら、そんなに外部との接触を拒絶して仙人のように生きているんですか?と聞きたくなります。
その上、どうしてこうなったか?という本質的な要因を深掘りすることなく、一足飛びに不正を行った従業員を刑事告訴すると語るというのは、もう経営者としての監督責任の放棄としか言いようがありません。
一般の従業員の中にも、クルマが好きで、クルマの整備に携わりたいと希望を胸に入社してきた方も多くいたのではないかと思うんです。そんな人たちが、パワハラまがいに不正を強要されて手を染めてしまう。彼らの希望をまさに踏みにじる経営であると言わざるをえません。
組織風土が劣化している会社と言わざるをえない
この問題を考えていくと、以前読まさせてもらった組織風土が“腐っている”会社の6つの症状(logmi BIZの記事)を自然と思い出しました。この記事から一部引用させていただいて共通点を探ってみたいと思います。
この講演をしている遠藤功氏が古巣の三菱電機の品質不正について語っています。
なぜこんな企業に成り下がってしまったのか。三菱電機なんてそんなことをする会社じゃない、極めて真っ当な会社です。でも現場が品質不正に手を染めざるを得ないように追い込まれてしまっているわけです。現場で問題が起きていますが、現場の問題ではないんです。組織の問題なんです。マネジメントの問題なんです。組織風土が傷んでしまうと、そんなことさえ起きてしまう。
まさに現場の問題ではなく、経営の問題なんですね。
そして、その後に出てくるパワポの資料が、まさに今回のビッグモーターという企業の根本というか本質について如実に語っているのです。
みなさんどう思いますか?かなり図星ではないか思ってしまいます。また経営側に対しては、こちらのパワポで語られています。
こちらも同様、かなり図星ではないか思われます。
経営責任が問われない限り、真面目に働いてきた一般従業員は浮かばれないと思います。
国の毅然とした対応を期待する
国土交通省、金融庁をはじめとして監督官庁がこの会社に対して、しっかりとした調査、監査を行なって、毅然とした態度で徹底した処罰を下すことを期待します。
そして、真面目に働いてきた一般従業員に対して、転職を希望する方には優良な企業を優先的に斡旋するなどの施策を講じるなどして欲しいと期待します。