人生を生きる上でシンプルかつ重要な教えを再認識
誰だったか?忘れてしまったのですが、あるスポーツ選手の愛読書としてお勧めされていたこの本を図書館で予約してみました。
題名:生き方 人間として一番大切なこと
著者:稲盛和夫
発行:サンマーク出版
京セラやKDDIを起こされて数々の功績を残し、JALが経営難に陥った際に、経営者としてV字回復された方。
自分にとっては、この本を読むまでは、ただすごい方なんだなという程度のイメージしかありませんでした。
しかし、この本を読んでみて、まさに人格者だなと感じました。本質をよく理解されている哲学を持った方だなと。だからこそ、経営者としての素晴らしい功績を残せたんですね。
そして彼には、子供の頃から教わった”人として正しいことをする”という道徳的な生き方が根底に息づいていて、それを長い人生を通して、邪念にとらわれずまっすぐ貫いていった方でした。
そんな彼を尊敬せざるを得ませんし、彼のその生き方が今後の自分の指針になると感じました。
そんな本書の中で、心に刺さった部分を中心に感想をまとめたいと思います。
この世を生きる意味
冒頭で、この世を生きる意味についてこう書いています。
私たち人間が生きている意味、人生の目的はどこにあるのでしょうか。もっとも根源的ともいえるその問いかけに、私はやはり真正面から、それは心を高めること、魂を磨くこととあると答えたいです。(P14,15)
このことは、まさに今自分が取り組んでいるテーマであって、こんなにストレートに書いてあることを嬉しく思いました。これが間違っていない正しい道なんだ。自分自身、いい気づきをしたんだなと思いました。
しかも、後半の方にもありましたが、理想的な完璧な人間になろうとしてもなることはできない、そうではなくてもそれに近づこうとする姿勢を持ち続けることが価値のあることなんだと教えてくれています。これには本当に勇気づけられました。
自分自身、完璧な心を持った人間になれるとは思えないし、そんな目標は自分にとって高すぎるのではないか?と考えていました。この言葉によって、ホッとした気持ちになりました。
日々の生活の中で、自分の心を少しでも高め、1日1日、少しでもより良い人間になれるように努力することを目標に努力していきたいと思いました。
人間として正しいことを正しいまま貫いていこう
生きる上で、人格・品格の重要性を説いています
嘘をついてはいけない、人に迷惑をかけてはいけない、正直であれ、欲張ってはならない、自分のことばかり考えてはならないなど、子どものころ、親や先生から教わったーそして大人になるにつれて忘れてしまうー単純な規範を、そのまま経営の指針に据え、守るべき判断基準としたのです。(P19)
これは、経営哲学というよりは、道徳心、その道徳心を持ち合わせた人格の重要性を示しています。
人というものは、やろうと思えばやれることをやれば正しい道を歩いていけるはずなのに、つい心の中の悪い部分・弱い部分が出て、私利私欲に走ったり、怠けたりして、それをやることができません。
稲森さんが言う、この子供の頃から当たり前のように教わった、誤解を恐れずに言えば、”ありふれた道徳心”を当たり前のように貫きつき続けること。それは、普通の人間には難しいことなのです。
それでも、それを愚直に貫き通すことで、遠回りのように見えても最終的には良い結果に到達すると言うことを教えてくれています。
これまでの自分の人生を振り返りつつ、いろんな人を見てきて、本当にそれを痛感しています。なので、基本に立ち返り、自分の今後の人生では、道徳心を大事にして愚直に貫き通して生きていきたいと思います。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
人生・仕事に良い結果を求めるための方程式を提示してくれています。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力 (P24)
「プラス方向」の考え方とは、どんなものでしょう。むずかしく考える必要はありません。それは、常識的に判断される「よい心」のことだと思っていただければよいでしょう。
つねに前向きで建設的であること。感謝の心を持ち、みんなといっしょに歩もうという強調性を有していること。明るく肯定的であること。善意に満ち、思いやりがあり、やさしい心を持っていること。努力を惜しまないこと。足るを知り、利己的でなく、強欲ではないことなどです。(P26,27)
熱意や能力以上に、その人の考え方が重要だと話されています。
本当にそれは思います。
いくら優秀で、熱意のある研究者でも、殺戮を繰り返す戦争兵器を開発するのを厭わないような考え方の人だとしたら、彼が成功と評価される仕事をすることはできません。罪人として裁かれる可能性もありますし、彼の才能や熱意が無駄になるということにつながります。
また、スポーツの世界でも考え方は問われます。勝つためにはどんな手段でも使うチームがあります。どんなにルールは逸脱していないとは言え、スポーツの中の道徳であるスポーツマンシップを逸脱した行為を繰り返し、勝利を得る。それが評価されていいのでしょうか?そういうことは長くは続かないと自分は思います。長く続けることは難しいことですからね。そして日本人としても正しい道を歩んでいるとは思えません。
経営者を例にとっても、近視眼的な考え方で、部下を誤った方向に引っ張ってしまう上司を多く見てきました。そういう人は往々にして道徳心のかけらもなく、恥ずかしげもなく前言をころっと翻す。その人自身に、考え方、もっと言うと哲学が中心になく、人の上に立つべき人ではない人が出世しているのです。そんな人を出世させている会社も会社なのですが。
プラス方向の考え方は、道徳心の話につながる大事な考え方だと思います。前向きな姿勢は、自分は昔から持っていると思っていて、それはこれからも持ち続けていきたいと考えています。
「有意注意」の重要性
「有意注意」と言う言葉を教えてくれました。
中村天風さんは、この意をもって意を注ぐことの重要性を強調され、「有意注意の人生でなければ意味がない」とまでいわれています。私たちの集中力には限界がありますから、つねに意識を一つのものに集めることは難しいのですが、そうであるように心がけていると、だんだんとこの有意注意が習慣化されて、物事の本質や核心がつかめ、的確な判断が下せる力が備わってきます。(P75)
気づきや聞く力、今を生きることや一心不乱に集中することにもつながる言葉だと思います。
自分に欠けていると部分だと自覚しています。
人と話すときに、つい別のことや先のことを考えてしまい、相手の話そうとすることに集中することができなかったたりします。
また、今日はこれをやるぞ!と決めていても、なんとなくYOUTUBEを見始めて、戻って来れなくなったり。
これらに対しては、今やっていることやこの瞬間に生きることに注意・集中して生きることを習慣にすべきなんだなと感じました。
「好き」であれば「燃える」人間になれる
これは、会社員時代の自分そのものだったと思います。
仕事をやり遂げるためにはたいへんなエネルギーが必要です。そしてそのエネルギーは、自分自身を励まし、燃え上がらせることで怒ってくるのです。自分が燃える一番よい方法は、仕事を好きになることです。
(中略)つまり、「好き」こそが最大のモチベーションであり、意欲も努力も、ひいては成功への道筋も、みんな「好き」であることが母体になるということです。(P108)
F1が好きで入った自動車会社では、量産車の開発部門に配属されました。そこで自分でクルマを運転するようになってから、運転の楽しさににハマって、F1そっちのけでクルマに魅了されていきました。どんどん好きになっていったのです。
自分自身、色々とプロジェクトを立ち上げ、量産につながる商品を作ってきました。それらは、自発なので当たり前ですが、自分がやりたいと思える仕事ばかりでした。その中で体験した、意外な発見やイメージしていた性能が実現できた時の達成感というものは何者にも変え難い感動でした。そして、それらを繰り返して行くうちに、さらに仕事が好きになっていったのです。
そうは言っても、仕事というものはすんなりいくはずもなく、苦しい時期や反対勢力に邪魔されて潰されそうになることも数多くありました。しかし、そんなときでも、稲森さんが語っているように、「好き」から来る仕事へのモチベーションが、それらを吹き飛ばしてくれました。
若い頃、尊敬する先輩が自分によく言っていました。
「仕事はモチベーションでするもんやない!お前は、モチベーションで仕事を選びすぎや!」と。
当時はそうなのかな?とも思っていましたが、今になって考えるとその先輩が間違っているということを断言できます。
最近の若い人たちは、これがやりたい!と言った何かギラギラしたものを持っている人が少ない気がします。ドライな人が多い。プライベート重視で、そのレベルをキープできれば仕事なんか、極論いうとどうでもいいと。
しかし、仕事を長く続けるためには、仕事に対する主体性を持つことが重要ですし、そのためにはやはり「好き」になることが本当に重要だと思うんです。
ぜひ、今やっている仕事の中で、少しでもやってて楽しい、あれ好きなのかなと感じた仕事があったら、それが自分の仕事になるような努力をして欲しい。それを主体的に仕事に取り組んで欲しいと思います。すると充実感の得られる仕事ができるようになるはずです。
自分のこれからの人生も、これまでのこのスタンスは大事に生きていきたいと思います。
心を磨くための6つの精進
心を磨き高めることの具体的なやり方を教えてくれています。
この心を磨く指針として、私は自らの経験から次のような「六つの精進」が大切ではないかと思い、まわりの人たちに説いてきました。
①だれにも負けない努力をする。(中略)
②謙虚にして驕らず(中略)
③反省ある日々を送る(中略)
④生きていることに感謝する(中略)
⑤善行、利他行を積む(中略)
⑥感性的な悩みはしない
(P137)
この6つは毎日気に留めながら、生きていきたいと思います。
ちょっと話は脱線しますが、この六つの精進をを実践できるようなやり方を始めました。
大谷選手が学生時代にやったマンダラートというものです。
マンダラートとは、真ん中に達成したい目標を書き、その周りの8マスにその目標を達成するために必要な要素を書く。そしてその8マスの周りにまた8マスを書いて深掘りしていき、具体的な実行項目に落とし込むというものです。
そして、落とし込まれた項目に対して、毎日それを見返して、できたものには単純に色塗りする。これを”やったぞノート”と呼んでいます。
これをやることの効能としては、
・やるべき項目を毎日見返すことになるので、潜在意識にやるべきことを染み込ませることができる。
・やったことが見える化できるため、達成感を感じる
・やっていない部分ことも見える化できるため、リマインドの効果もある。
・ただ漫然と生きるのでなく、「六つの精進」の中にある「反省ある日々を送る」効果がある。
自分は、真ん中に「自分らしく生きていく」という目標を決め、マスを埋めてみました。そうやって落とし込まれた項目には、この六つの精進を含む多くの道徳的な項目があったのです。
これは非常に良いやり方だと思っています。これを日々実践していって、「自分らしくいきていく」という目標に近づけるように頑張りたいと思います。
人を惑わせる「三毒」をいかに断ち切れるか
これが人間という存在にとって一番難しい課題です。
欲望、愚痴、怒りの三毒は百八つある煩悩のうちでも、こと人間関係を苦しめる元凶であり、また逃れようとしても逃れられない、人間の心にからみついて離れない「毒素」と言えましょう。
(中略)大事なのは、できるだけ「欲を離れる」ことです。三読を完全に消すことはできなくても、それを自らコントロールして抑制するよう努めること。この方法に近道はありません。(P152,153)
わかっていても、反射的、無意識に、これらの感情が沸き起こってしまいますね。
例えば、クルマを運転中や、電車を待っている時に横入りされた時に、ムカっとして「お前何やってんだ!」と口走ったり。
やはり、この三毒が起きる原因として考えられるのは、
・自分の軸がない
・他人と自分を比較する
・足るを知らない
・思いやりがない(利他の気持ちがない)
・相手の視点で物事を考えられない
と考えます。逆に言うと、これらの逆を実行できる人間になればいいと思います。
先ほどの例で言うと、「急いでいるんだな」とか「運転初心者で見えていないんだな」など思って心を落ち着かせればいい、そうできるようになればいいと思います。
心の中心に真理につながる美しい「核」がある
この稲森さんの心に対する説は、すごく腹落ちした言葉でした。
私は、人間の心は多重構造をしていて、同心円状にいくつかの層をなしているものと考えています。すなわち外側から、
①知性ー後天的に身につけた知識や論理
②感性ー五感や感情などの精神作用をつかさどる心
③本能ー肉体を維持するための欲望など
④魂ーー真我が現世での経験や業を纏ったもの
⑤真我ー心の中心にあって核をなすもの。真・善・美に満ちているという順番で、重曹構造をなしていると考えます。(P231)
理性と良心をもって感性や本能を制御しつつ人生を歩み、「善き経験」を多く積んでいくことが、つまりは心を磨くことにつながり、おのずから悟りに近づくことにもなる。そうやって高められた魂は、現世だけではなく来世にも継承されていくのです。(P240)
この一番内側から外側に向かって、どんどん後天的に纏ってきた層だと言うことです。
これは本当に理解できます。
今でも、子供の頃は純心だったし、素直だったし、なんでも感動していたなあと思います。それがまさに、”真我”だったのかな?と思います。
それが、これまで生きて行く中で、いいことも悪いことも経験しながら磨かれた”魂”が形成され、苦い経験をしたり、欲望にまみれながら、無意識を左右するであろう”本能”が形成され、”知性”や”感性”がそれら本能の内側にあるものをダイレクトに現れないようにコントロールしている。そんな風に考えると、おっしゃる通りだなと思います。
そして、これからは、正しく生きることや純粋に心を磨くことで、これら全てを改善できて、心の中心が自然に素直に現れる、子供の頃のような心になれたらいいなと思いました。
自分の生き方を後押ししてくれるような1冊
まさにそう思いました。
また、人として正しく生きるだけではなくて、遠回りしても、最終的に成功するためのヒントが、誰しも忘れがちでこんなにシンプルなことだと言うことを再認識させてくれる1冊だと思います。
我々アラカン世代だけでなく、若い現役世代の方にもお勧めしたいと思います。
彼らがこの本が語る人生の本質を理解することで、これからの人生がより良くなっていくことは間違いないと思います。その辺りの処世術関連やハウツー本なんかよりも、明らかに本質的で価値のある一冊だと思いました。
うちの子供達にも読ませたいと思います。