何気なく読み始めたこの本
本好きな娘の蔵書の中で、何気なく手に取ったこの本。
題名:持たない幸福論
著者:pha
発行:幻冬舎
表紙には、我々の世代が若い頃からある意味無意識に植え付けられてきた常識をひっくり返すような衝撃的な言葉が並んでいます。
・働きたくない
・家族を作らない
・お金に縛られないもっと自由に伸び伸びと、京大卒・日本一有名な“ニート“が提唱するこれからの生き方。
僕はいわゆる「真っ当」な生き方から逃げて楽になった。
しかし、読み終わった後、
・現代社会の価値観は、我々世代と全く違う
・それは、現代の社会や時代が作り出したもので、我々は理解することが大事なこと
・現代社会に素直な彼の価値観で生きることは、人間として自然な生き方ではないのか?
と感じました。また、著者のphaさんは、こういう生き方をしているのは、「ただ体力がなかっただけ」とおっしゃっていますが、ぼーっとしている時間の中で、ほんとうに大事なものは何か?を本質的に考え、達した境地なのかなと思いました。
若いのにも関わらず、達観した考え方。すでに我々世代に近い、削ぎ落とされた考え方。自分は、今の年齢であるからこそ、すごく共感するものがありました。
この本の中で感銘を受けた部分をピックアップして紹介させていただきます。
働きたくない
絶対にやらなければいけないということというのはそんなにないのだ。(P31)
要は、世の中にほんとうに絶対にやらなきゃいけないことって別にないから、好きなこととかやりたいことだけやればいいと思う。(P32)
自分達の世代は、良くも悪くも日本の典型的な価値観の時代。
やらなきゃならない、やるべきだという価値観を周りや社会、集団から押し付けられるというより、無意識に洗脳されていた時代。
今は違う。個人で自由に発想して価値観を作り出せる時代。手段や道は色々とあります。自分にしっかり向き合って、自分に問いかければ、なんとなく自分が好きな方向が見えてくる気がします。若者も我々世代も、そういう楽に自然に生きていくことがすごく大切な時代のような気がします。
自分にもドストライクな生き方、まさにこの生き方なんだと痛感しています。
何もしない時はひたすら何もしないのがいい。大抵の悩み事は休息を十分に取れば半分くらい解決する。(P32)
やはり、疲れて消耗している時は、考え方もネガティブな方向になり、負の連鎖に陥る傾向にあります。自律神経を整える意味でも、ぼーっとする時間は大切です。自分は、ベランダに出て、風を感じ、木々の葉葉が立てる音、鳥や虫の鳴き声などを聞きながらぼーっとしているのが好きです。本当に落ち着きます。
自分も鬱の時に体験していますが、その時はほんとうに何もしたくなくなります。深刻な鬱の症状になる前に、許せれば、長期の休暇をとられることをお勧めします。
実績や評価は、将来自分を縛ることになる。何かを得ては壊す、得ては捨てる、というリセットをくる返すのが、一番充足感が得られるやり方だと思う。(p38,39)
これもすごく共感します。やはり、実績、評価というのはすごく大事だし、個人の達成感とも言えるものです。しかし、それだけにこだわっていると、自分の進む道に外部からレールを敷かれた状態になり、自由に道を選択して生きていくことの障害になり兼ねません。自分の価値観としては、自由に生きていくことが大事だと決めていたので、上司にはかなりわがままを言って、出世より自由に仕事を選べる道を選択しました。その選択には後悔していません。そのおかげで、社内では、自分のやりたい仕事を続けてできましたし、やり遂げたテーマの後はリセットして次のテーマと進めていけましたし、退職直前までやりたいことをやり続けることができました。
また、少し話はそれますが、実績、評価、役職を重視する人の中に裸の王様みたいな人、会社にいっぱいいます。役職を持っているからと横柄な態度を取る人。全く本質がわかっていない人。尊敬されているのは、一握り。残りは大概、嫌われているか、会社の中だけは仕方なく付き合おうという程度の人です。
また大企業に所属していると、社外の人に横柄に対応する残念な人もいます。自分個人は、偉くもなんともないのに、大企業という鎧を着て横柄な態度。勘違い甚だしい人です。
これらの人は、外部からレールを引かれているというより、レールにしがみつき降りれない悲しい人々です。こういう方たちは、会社を辞めた時点で、自分は会社にしがみついていたんだ、自分では何もできないんだと気づくという悲しい未来が待っています。
人間、素直に謙虚に生きていかなければいけないということを痛感させてくれる反面教師ではあります。
こういうことに、この歳で気づく著者もすごいというか、達観しているというか。感心します。
人間は自分に自由意志がないということに耐えられない(P46)
これもまさに自分の生き方そのもの。共感します。
自分の将来を他人に決められたくない、常々そう思っていましたから。
社会は人間には必要だが社会は人間を縛る(P50)
社会と自分のバランスをどう取っていくかについて、僕は次項のような図で整理して考えている。
①自分肯定+社会肯定 (仕事も自分もいい感じ)
②社会肯定+自分否定 (やらなきゃいけない仕事はあるけど、辛い)
③自分否定+社会否定 (自分はもうダメだ、仕事も何もかもどうでもいい)
④社会否定+自分肯定 (ひたすら自分の好きなことをしているだけで楽しい)
→自分肯定+社会肯定 に戻る (P54)
自分も社交的な人間ではありませんので、会社での人間関係すごく悩みました。業務は自分が発案した仕事ばかりでしたからやりがいを感じていましたが、それに協力してくれなかったり邪魔したりする人々に苦労しました。
うつの時子の4つのサイクル経験しましたね。
①仕事も自分も順調
②いろんな仕事上の障害はあるけど、自分で起こした仕事なんだから辛いけどやり遂げないと。
③休日でも邪魔するやつのことが頭をよぎり夜は眠れない。休職している自分は無責任な人間だ。
④休職中、好きな運動をしたり、ゆっくり映画を見たり。日々楽しい。
①復職
きつくなったら迷わず、休むことですね。もう鬱なんて、社会的な病気でもありますし、悪化する前に休むこと。今思うと、自分がいなくなっても、全く同じではありませんがなんとかこなしてくれる代わりがいます。
家族を作らない
僕は家族というものを全く否定する訳じゃないけど、今までの家族というのはちょっと外部に対して綴じすぎだったという感じがする。(中略)なんかもうちょっとオープンさを取り入れて、外部の人間とうまく緩くつながりやすいような風通しの良い形が望ましいと思う。(P83)
日本経済が伸び悩み、経済格差も拡大し、給料も増えず。今の日本はこのような状況に追いやられています。それはつまり、結婚して家族が作れる余裕がなくなっている時代。そうでなけれは、外部の人間とうまく緩くつながるコミュニティを作るべきというお話でした。
やはり、今のインターネット社会、SNSを用いていろんな発信をすることで、世界中の人々とつながることもできますし、社会と接している窓口ともいえます。これによって、コミュニティが自然に形成されていけば、本当に良いことだと思います。
phaさんはシェアハウスを経営されているということで、そういう中でのコミュニティが存在して社会と繋がっているという形は、ある意味新鮮で新しい形なんだなと思いました。
ただ、家族は作った方がいいと、この歳になって思いますよ。家族は、身近な存在として、心配しあって、助け合って生きていくこと、思いやりの大切さを教えてくれますし。ほんと、鬱になった時は妻に助けられましたし。妻には頭が上がりません。夫婦共働きで消耗してしまって、自分の生き方で生きられないというのは本末転倒になりますので、経済的な問題がクリアできるのであればですが。
お金に縛られたくない
(会社員時代の)その頃はに比べたら今の方が、お金がなくて気持ちに余裕があって自分のペースを保って生活ができているのでちゃんと生きている感じがするし、全体的な幸福度は高い。(P110)
わざわざお金をかけて外国とかに行かなくても、身の回りの生活の範囲をいつもと違った目線でゆっくり見回すだけで、面白いものや新しい気づきとかはたくさんあるものだ。(P111)
引退した自分には、本当これらの言葉は痛感します。
特に、気づきの部分。会社員時代は、忙しくて見向きもしなかった?というよりできなかったことに気づくようになりました。気づく余裕ができたんですね。
・クルマにくっついている黄色いてんとう虫やカマキリ
・いろんなことを教えてくれる数々の本
・妻の話。(忙しくて聞いているようで聞いていなかった。ごめんなさい)
・家から見える木々の成長
・風の向き、吹き方、匂い
・スーパーの野菜の値段
・ちょっと違う道をいってみると違う風景が広がっていること
・街中で赤ちゃん、子供にあった時に可愛いと思う感情
・犬や猫など動物を見たときの感情
そんなことを感じながら、飽きることなく自由に日々生活できることは、幸せな生き方なんだなと思っています。
お金がなくても楽しく暮らすための心掛けとして、一番大事なのは、「他人と自分を比べない」ということじゃないかと思う。そして、他人と自分を比べなくても兵器になるためには「自分の価値基準をはっきり持つ」ということが必要だ。(P119,120)
これもその通りですね。いい意味で、自分は自分と言えること。自分の価値基準をはっきり持つ、ナンバー1プライオリティは何か?を持つこと。
自分はやはり自由なのかなと思います。自分の考える範囲で、自由に束縛されずに生きていくこと。自分の生きる道は、他人に決めさせないこと。
周りの人が、金持ちかどうかとか、いい生活しているとかどうでも良く、自分は自分と強く思い生きていきたいと思っています。
僕がシェアハウスをやっているのも別にお金を儲けようとしている訳じゃなくて(中略)なんかそんな風に、直接リターンを取ろうとしてなくても世の中に何かを提供し続けていれば、そのうち何かが巡り巡って自分に戻って来るものだな、ということを思う。(P135)
現代ではお金と全く無縁で生きていくのはできないけれど、充実感を持って生きるためにはハイスピードで動いていく社会に自分を全て適応させるのではなくて、お金以外の論理で動く部分も忘れないようにして、自分のペースを保つことが大切だ。
お金は大事だが、全てではない。人間やはり、価値観を大事に幸福を感じながら生きていくことが大事だなと今になって思うのです。
そのためのコツとしては「体を動かして何かをする」とか「自分の手を動かして何かを作る」などを、日常的にすることが有効だと感じる。それは、お金とは別の基準となるかっこ「自分の感覚や感情」を大切にすることにつながっているからだ(P147)
「ご飯が美味しい」とか「散歩が楽しい」とか「夕焼けが美しい」とかそうした生活の中にある些細な楽しみが人生の基盤を作っている。(中略)切羽詰まったような時も「人生それだけが全てじゃないよな」と一歩引いて落ち着いて物事を考えられるような、個人的な空間を確保することでもある。(P150)
「自分の感覚や感情を大切にすること」、自分も大事にしています。
自分も引退してから、余裕ができて、自分の感覚や感情が戻ってきたからです。
先ほど言った「気づき」が増えたり、いろんな体の感覚が復活してきたりと。
会社員時代の多忙により失われていた感覚。子供時代とは言いませんが、若い頃に持っていた素直な感覚が戻ってきた気がしていて、今後この感覚をキープしていきたいと思うようになっているのです。
phaさんの考え方
phaさんは、ネットで調べるとまだまだお若い方で、自分と世代が違いますが、もう全く共感することばかりで、びっくりしました。最初に書いたように、我々の世代が気づくようなことを気づいているのですから。
また、手に取った時、ちょっと変わった名前だった(正直ふざけた名前と思った。phaさんごめんなさい)し、ニートって書いてあったので、ちょと期待せずに読み始めました。見事に裏切られましたが。
読み終えて、感心したの一言。
また、自分の考え方でよかったのだなと安心感をもらえた1冊でした。
自分の生き方が辛かったり、このままでいいのかと思っている方、何か今を変えたいと思っている方、異なる視点や考え方が学べる本であると思います。ぜひ読んでみてください。
また、phaさんの本はまだあるようなので、今度また探して読んでみたいと思います。
それでは!!