光が見えたこの試合
リーグ3戦目のこの試合。正直、この試合は、今シーズンの方向性を占う重要な試合でしたし、なんとしても結果が欲しかった。そして願わくば、チームの形が見えてくる試合内容になればいいと思っていました。
そう言う意味で、内容結果とも光の見えた試合だったと思います。
前回のヴェルディ戦の観戦記で浦和の状況を、「春の気配」と例えましたが、この試合は、「春はもうすぐ!」と言っていいと思いました。
キャプテンのこの笑顔が物語っていますね。
試合全体を通して
今年の方向性やプレースタイルを明確に感じた試合でした。
積極的な裏抜けや距離感の良い攻撃
ヘグモ監督はこういう攻撃をしたかったんだろうなと思いました。
ポケットにどんどん飛び込んで、相手を押し込み、後ろから距離感よく人数をかけて飛び込んでくる。前田選手や松尾選手は、相手をぶっちぎってシュートを放つ。
攻撃時にも全体的に距離感が良く、ボールホルダーをしっかりサポートする選手がいると言う姿勢が明確でした。
ポジション固定という言葉が一人歩きして、選手全員がそれを正直に守りすぎ、結果的に縛られていたこれまでの2戦。その誤解がクリアになって、理解が深まった様子で、選手たちが解き放たれたようなプレーを見せてくれました。
素早いネガティブトランジションと4-4-2の安定した守備
そして守備に関して、ヘグモ監督は、柔軟な対応力を見せ始めました。
これまでの2戦は、アンカーのグスタ選手の両脇を狙われやすく、コンディションやJリーグへの順応がまだまだだったこともありますが、グスタ選手の守備のアプローチも遅れ気味で軽いシーンが見られました、
しかし、この試合でのセットした守備陣形の4-4-2は明らかに昨年のものでした。ヘグモ監督はマチェイ監督の財産を有効に使うように、守備の仕方を回帰させた気がします。グスタ選手と敦樹選手のダブルボランチになり、かつ全体がコンパクトになって距離感がよくなって、昨年同様の安定した守備を見せてくれた気がします。
早くも、自分がヴェルディ戦で不安視していた、守備時の距離感の課題を解消してくれた気がします。
勝者のメンタリティ
この試合は絶対勝ち切ろうというメンタリティを感じました。芝のコンディションが悪い中、全員がハードワークしてくれました。
前半は、浦和が圧倒し、後半は、70分まではうまく相手の攻撃をコントロールしながら、要所要所でチャンスを作り、70分以降は相手の交代で札幌がやや優勢になるものの、最後はやらせず。
しっかりと勝ち切った試合でした。
ヘグモ監督 Jリーグ初勝利!
試合後のヘグモ監督のこの表情。いいですね!
いつもの温厚そうな風貌から想像できない、内面の熱さを感じますね。
背中に自信がみなぎって見えます。
試合状況
前半は積極的な攻撃で圧倒
前半開始早々、西川選手は、繋ぐことを選択せずに、長いボールを前線に蹴り込みます。この試合、全般にそういう傾向にありました。マンツーマンディフェンス戦術をする札幌というのもありますし、グラウンドの状況の悪さ(芝の生育不良とグラウンドの柔らかさ)を考えても、無理して繋がず、前線にフィードすることもいい作戦だったと思います。
その直後の攻撃で、左ウイングの関根選手が右に流れてポケットに進入し、その後の前田選手のドリブルシュートにつなげます。この時点で、裏に抜ける積極性と、この試合はポジションの束縛からの解放を感じました。
攻撃時にややポジションが流動的になる反面、攻から守の切り替えが早く、守備ブロックになった状況では、4-4-2でコンパクトに守り出します。敦樹選手が、ボランチの位置で、昨年のようにアグレッシブに相手選手を刈り取るシーンが多くみられました。
前田選手のキレのあるドリブルは、相手ディフェンスを何度も切り裂き、1分、2分、13分とシュートを放ちます。切れ込んでいくドリブルを見ると、好調でキレがあったモーベルグ選手をさらにレベルアップさせた印象ですね。本当に頼もしい。敦樹選手も近くでサポートしていましたし、酒井選手も後方から縦パスを前田選手に狙っていましたので、この右サイドの3人のユニットはかなり成熟しているした
この試合、興梠選手がフォワードで先発したのですが、昨年に続き、3試合目で初勝利をもたらした立役者となってくれました。興梠選手は、やはりボールのもらい方やスペースの作り方が上手いですし、関根選手や佳穂選手とのコンビネーションが素晴らしいですね。24分のシーンでは、関根選手→興梠選手→関根選手→佳穂選手→関根選手→興梠選手と流れるようなパスで、シュートには至りませんでしたが、テンポの良い攻撃を見せてくれていました。
そんないい流れで迎えた30分。コーナーキックのチャンスに、前田選手が素早くショートコーナーを選択。それを受けたグスタ選手が一瞬時間が止まったかのようにプレーを止めます。同時に札幌の選手が迷うかのようにプレーを止めた時、後ろから駆け込んできた酒井選手にグスタ選手のドンピシャクロスを合わせ、酒井選手のジャンピングヘッドが炸裂します。あとで見返してみると、プレーが始まった時、やっと佳穂選手が間に合ったタイミングで、ショルツ選手やマリウス選手は後ろから上がってきていて間に合ってなかったんですね。札幌ディフェンスの虚をついた前田選手のファインプレーだったと思います。
その後も、浦和ペースが試合が進んでいく中、アクシデントが発生。41分、ショルツ選手が、モモ裏を押さえて座り込んでしまいます。本日の報道では、ハムストリングの肉離れということ。芝の影響や昨年から蓄積していた疲れなどあるかなと思いますが、しっかり治して復帰してもらいたいと思います。
後半はうまくコントロールして勝ち切る
後半も浦和ペースの中、前田選手が脱水症状で足が攣ったのと、興梠選手はスタミナ切れだと考えられる交代。松尾選手とサンタナ選手が入ります。
サンタナ選手は、ピッチに入った時はカラダが重そうで反転の動きにキレがなかったのですが、徐々に動けるようになってきます。終盤はしっかり前線からプレスしてボールを奪ったりとリズムが出てきます。
60分、62分、69分と松尾選手の左サイドの突破からクロスに合わせましたが、タイミング合わず。まだまだこれからと言ったところでしょうか。しかしこの辺りの時間帯で、追加点をとって試合を楽に進めたかったところでした。
70分に札幌は3枚替えでルーキーを投入。その後彼らが躍動し札幌が攻勢を強めますが、浦和は、ソリッドなプレーで最終的にはやらせず。81分に、足のつった敦樹選手、佳穂選手に代えて、岩尾選手、大畑選手で試合を締めます。そして、相手を無得点に抑えて勝利。今季初勝利を飾ることができました。
印象的だった選手たち
この試合は、全員素晴らしかったのです。本当に印象的だった選手がたくさんいました。
キレキレの両ウイング 前田選手と松尾選手
左右のウイングの選手の突破からのシュートやクロスは、まさに痛快の一言でした。
敦樹選手や、酒井選手がサポートして、前田選手が1対1で勝負できるシーンを作り上げていましたし、そうなったら、前田選手は全勝でしたね。シュートは惜しくも入りませんでしたが、病み上がりとは思えないパフォーマンスを見せてくれました。
また、後半から出場した松尾選手もキレキレのパフォーマンス。左サイドでぶっちぎり、2度ほど決定的なクロスを挙げていましたね。
今後、この両ウイングとサンタナ選手との関係性がより良くなれば、3人で得点を量産してくれる未来が見えてきました。
コンディション上がってきた グスタ選手
これまでの2試合と比べて、守備でのハードワークが明らかに目を見張りました。勝利をもぎ取りたいというメンタル的な部分に加えて、フィジカルコンディションが向上してきているのがみて取れます。最後のプレーのスライディングタックルは、心が震えました!
そして、ワンタッチパス、スルーパス、決勝点となった酒井選手へのピンポイントクロスと安定の技術力を見せてくれました。
システムの肝の両インサイドハーフ 佳穂選手と敦樹選手
この試合での彼らの運動量や献身的な動きは目お見張るものがありました。81分に交代した時に、2人同時に足が攣っていたことがそれを証明しています。
この試合、守備でも攻撃でも、グスタ選手との3人の距離感が素晴らしかったと思います。かなり意識してプレーしていた気がします。
そのため、2人の前後の運動量は半端ないものとなったと思います。
印象的だったシーンとしては、29分、中盤の位置でぽっかり空いたスペースに気づいた佳穂選手が、そこに走り込んで、ショルツ選手の縦パスを受けたシーンは、素晴らしいプレーだったと思いました。
どなたかが言っていた、このシステムの肝はインサイドハーフにあるというのがわかった気がしました。
縦横無尽!!関根選手
縦横無尽!!躍動!!諦めない!!そんなプレーを見せてくれた関根選手。
ベテランの領域になってきた彼はチームプレーに徹するような運動量あふれるプレーでチームのダイナミズムを加速してくれている気がします。
存在感ある安定したプレーを見せてくれた 佐藤選手
前半41分、ショルツ選手の怪我で、急遽出場した佐藤選手。
ショルツ選手がいなくなることの喪失感は、選手が1人いなくなるというレベルのものでなく、守備はもちろん攻撃面やチームの精神的支柱である面を考えると、2人いや3人分の戦力を喪失したイメージがあります。自分としては相当ショックでした。
しかし、それを払拭してくれるような存在感を佐藤選手は見せてくれました。
正直、彼のプレーを公式戦で見るのが初めてでした。ですが、彼が素晴らしい選手だとわか流のに時間がかかりませんでした。
周りの選手もショルツ選手がいなくなることの不安を感じたに違いありません。しかし、交代で入った佐藤選手の満面の笑顔が、彼らの不安を和らげたに違いありません。
そしてプレーでもしっかりとその実力を発揮します。
まさに井原選手のような安心感と固さ。ヘディングの強さは那須選手のよう。またクレバーにラインを統率するところも素晴らしいと思いました。
昨年、ガンバでのチームメートだった鈴木武蔵選手とのバトルはやりやすかったのかもしれませんが、彼とのバトルは圧勝でした。
酒井選手と重なるシーンなどありましたし、攻撃面ではまだ未知数ですが、ショルツ選手不在の中、実戦でしっかりと実力を発揮して、ショルツ選手にスタメンを譲らないくらいに存在感を見せて欲しいと思います。
長いシーズン、今回の佐藤選手に起きたことが、井上選手や石原選手など他の選手にも起きる可能性があります。今回の佐藤選手の実例から学んで、しっかりと準備してもらいたいと思います。
札幌ドームのグラウンド状況について
最後に、札幌ドームのグラウンド状況についてお話ししたいと思います。
自分の主張としては、
「Jリーグが2026年から秋冬制に移行することに決めたのであれば、豪雪地域をホームとするクラブに対し、Jリーグが芝の養生のための投資をしっかりとやって欲しい。」
と思うのです。
正直、現在の札幌ドームのグラウンドは、J1リーグを開催できる基準に達していないと思います。
一つ目の理由は、選手たちが怪我をしやすい。地面が柔らかすぎで踏ん張るのにも余分な力が必要なんでしょう、浦和の選手は足を攣っている選手が多かったです。またそれが直接的な原因か不明ですがショルツ選手は肉離れを起こしてしまいました。
二つ目の理由は、グラウンドの凹凸で変なバウンドをしてしまって、綺麗なパスサッカーを見ることができません。これは、美しいサッカーを目指す札幌自身も望んではいないことだと思います。
自分は、自動車開発の仕事で毎年長期間旭川に出張していて、冬の厳しさを知っていますし、厳しい環境で仕事をされている札幌ドームの芝の管理者を攻めるつもりはありません。
素人考えで申し訳ないですが、ドームであるからこそ、冬の間、室内での芝の育成はできないものでしょうか?そのために、エスコンフィールドで見た、芝育成のための照明器具が必要なんじゃないかなと思うんです。
豪雪地帯のJクラブだけがそう言った割に合わない投資をするのではなく、Jリーグが率先して行うべきではないかと思います。
次の試合は、湘南戦
次は、3月17日(日)アウエイ湘南戦です。
今回の流れを切らないようにしっかり繋いで連勝をもぎ取りたいと思います。また内容に関しても実戦でしっかり成熟させていけるといいですね。
※なお、本記事の写真で、自分で撮影した写真以外は、浦和公式サイトの写真を引用させていただきました。