明らかに上昇機運を感じた試合
桜はやっと咲き始めた3月30日。そして春らしい黄色の菜の花が咲き乱れる中、今節は、ホームでのアビスパ福岡戦です。
アビスパ福岡は、2022年まで故郷のクラブとして親近感を持って見ていました。それは正直、浦和を脅かすほどのレベルまで至ってはいなかったから。2023年、長谷部監督が長年作り上げてきたチームが成熟の時を迎え、手強いライバルとなったことは明らかでした。結果的に対戦成績1分け2敗。それら全ての試合を目の当たりにし、屈辱的な記憶でした。
正直、試合前から、ACLの負荷が明らかにハンディとしてありました。しかし、それを言い訳にしてはいけません。世界を目指すクラブなら、その厳しい日程を勝ち抜ける戦力を備えておかなければなりませんでした。
今年は、ACLの負荷もない中イーブンなコンディションで昨年の屈辱を晴らすべく、本気で勝ち切る必要のある試合でした。
結果的には、内容も伴った素晴らしい結果をもたらしてくれました。今後のターニングポイントとなった試合だっだと思います。
試合前の様子
選手紹介のプレート
スタジアムに入ってみると、前回のベルディ戦に比べて変化点がありました。コンコースの中を歩いていくと、選手の大きなプレートがコンコース内に貼られていました。サポーターたちにとって、これは嬉しいですね。サポーターたちは、お気に入りの選手の写真の前で、写真を撮っていましたし。推しの岩尾選手の前でパシャリ。今日こそはスタメンで活躍してくれ!!と念を込めながら。すると、それが功を奏したかわかりませんがスタメンでした!!
前目のポジショニング
娘が今年からシーチケになったことで、早めに入場できるようになったおかげで、今までより前目のポジショニングをとることができました。あまり前の方だと、立体的に見えないかな?と心配していましたが、そんな印象は全くありませんでした。
それ以上に、以前の後ろ目のポジションと比べて、試合が始まってからの浦和サポーターの声が背中を押すような怒涛の声に聞こえ、すごく頼もしいと共に、自分も腹の底からしっかり声を出さなきゃと思いました。
デカ旗「白」のリメイクに参加
その後、昨年のACL決勝の日に強風で破れてしまったデカ旗リメイクに参加。どんなことをやるんだろうと思っていましたが、赤いハートの部分が縫ってある糸を少し切るだけの作業でした。しかし、この作業はすごく有意義だと思いました。サポーターがこの作業をみんなでやることにより、この旗に対する愛着感を持ったり、一体感を醸成することができることができるからです。
こんな素晴らしいことを考えつくコアサポーターの子たちは、昨年の暴動から立ち直ろうとしっかりと歩み始めた気がして嬉しく思いました。
まだまだ、引き続きやるようなので、参加されていない方はぜひ参加してみてください。
試合全体を通して
ビルドアップの形、守備の変化が見えました。個々のポテンシャルが活かせる配置布陣が見えてきました。全員がチームとして回り出した試合だったと思います。
ビルドアップが明らかに安定してきた
新ビルドアップが安定してきました。
キーとなった一つ目は、明らかに岩尾選手のスタメン起用です。
浦和がボール保持時は、福岡のフォーワード、ザヘディ選手がグスタ選手のパスコースを消すというよりも、マンマークと言えるほどのポジショニングをとって、浦和のビルドアップを阻害しようとしてきました。前半はしっかりとその役割をまっとうしていて、グスタ選手へボールが渡るのが非常に難しかったのです。
そこで、この試合スタメンで起用された岩尾選手がうまくビルドアップの出口としてボールを受ける動きをします。このプレーに、明らかに助けられたと思います。正直、岩尾選手がスタメンじゃなかったらと考えるとゾッとします。
また敦樹選手も、佐藤選手などからボールを受ける動きをしたり、試合が進むにつれてサイドバックの2人が受け手になるなど、以前に比べて、ビルドアップの出口の選択肢が格段に増えてきた気がしました。
二つ目のキーは、佐藤選手の縦パス。相手ディフェンダーを惹きつけておいて、精度の高いグラウンダーのパスを突き刺してきます。相手の前線からの守備を1発でかわし、前に進める技術。もう、これは明らかな武器です。
そして、特に終盤には、ワンタッチパスが増えてきたこと。全体のスピード感がアップして、明らかに安定感が出てきたと感じました。選手同士がそれぞれの特徴を分かり合い出していて、距離感も良くなってきたことが要因だと思います。
守備の変化(前からのプレスとダブルボランチ)
前節の湘南戦での4失点の反省として、守備の変化が見れたと感じました。
一つ目は、前からのプレス。
前節に比べて、ボール非保持時には、前目の位置からプレッシングを徹底していました。最前線のサンタナ選手から積極的に相手ボール保持者にプレスをかけることによって、徐々にコースを限定し、ズレたパスを後ろの選手が回収するというシーンが何度も見れました。1点ビハインドで始まった、後半立ち上がりはその積極的な姿勢が顕著に見れました。
二つ目は、終盤でのダブルボランチ化。
76分、敦樹選手に代わって中島選手が投入された時点で、グスタ選手と岩尾選手がダブルボランチのポジションに変わりました。勝っている状態での守備の安定といういう意味では、ダブルボランチ化は有効な手段ですし、岩尾選手のポジショニングは明らかに守備の穴を埋める素晴らしい動きでした。また、中島選手も、以前に比べて前線での守備の強度は明らかに上がっていますし、攻撃の爆発力はもう歴然としています。この4-4-2というか、4-2-3-1は、今はオプションであろうかと思いますが、正直、対戦相手によってはスタートから使ってもいいのではないかと思います。個人的には、中盤の3人は、この3人、岩尾選手、グスタ選手、中島選手の組み合わせがベストなんじゃないかと思っています。
個々がポテンシャルを見せ始めた
サンタナ選手、リョーマ選手、グスタ選手。チームがうまく回り出した中で、新加入の選手たちが徐々にその本来のポテンシャルを見せ始めています。
サンタナ選手のミドルシュート。リョーマ選手の明らかに突出した攻撃センス。グスタ選手の効果的なサイドチェンジのパス。
それぞれの選手たちのコンディションが上がって、ヘグモ監督も適正にあったポジショニングで選手たちを使い出したら、とてつもないパフォーマンスを発揮するのではないかと思えるようになってきました。
試合状況
前半立ち上がりから攻勢だったが、ハチの人刺しで失点
立ち上がり4分、サンタナ選手のヘディングシュートに至ったシーン。グスタ選手のワンタッチパスで展開し、前田選手、大久保選手、そして大久保選手の裏を駆け上がったリョーマ選手が切り返し、ドンピシャのクロスを上げます。サンタナ選手のシュートは枠を外れましたが、いい流れでの攻撃を立ち上がりから見せてくれました。
その直後の6分には、グスタ選手がこぼれ球をワンタッチで前方のサンタナ選手にパスを送り、サンタナ選手が相手ディフェンダーをもろともせずミドルシュート。パンチ力のあるシュートは惜しくもセービングされてしまいましたが、サンタナ選手のコンディションが明らかに上がってきたことがわかります。
それ以降、新ビルドアップで前進して、相手を自陣ゴールエリア付近に押し込むシーンが続きます。
しかし、押し込んでいるシーンでのボールロストで、福岡にカウンターを許してしまいます。ザヘディ選手がドリブルで右サイドを駆け上がりますが、目の前に佐藤選手、マリウス選手の2枚いる状況。北ゴール裏で見てると、ああこれは防げるなと思ってみていました。しかしボールがいつの間にかゴールに吸い込まれていました。一瞬をやられた、まさに蜂のひと刺し。ザヘディ選手は、初対戦でしたが、ドリブル時のボールの置き方が独特で晒しているように見えて意表を突いてシュートを放つという独特なプレースタイルでした。次回はもうやらせてはいけません。
しかし福岡のチャンスと言えばそれくらいで、圧倒的に支配していた印象でしたし、その後も、ビルドアップが冴えて、攻勢を仕掛けますが点に至りませんでした。
この日は、明らかに前田選手は徹底マークされていました。福岡側も前節の湘南戦のパフォーマンスを見ればそうしますよね。必ず2人で封じることを徹底していましたので、個人の突破が難しい状況でした。
後半、前プレスで圧力を強め逆転
後半立ち上がりの浦和サポーターの「歌え浦和を愛するなら」が、選手たちのハートに火をつけたのか?前半に比べて前プレスを強めて、ボール奪取に成功していきます。
52分、岩尾選手がグスタ選手にパス。グスタ選手が左へのサイドチェンジをして、ボールを受けたリョーマ選手がセンタリング、跳ね返りを岩尾選手がミドルシュート。グスタ選手の特徴である鋭いサイドチェンジのボールが相手を左右に揺さぶれることがよくわかるシーンでした。
続く、54分、佐藤選手がボールを持って、相手選手を惹きつけ、グスタ選手に鋭い縦パスを入れます。グスタ選手は、ワンタッチで右サイドの酒井選手へとパス。このビルドアップが明らかに新ビルドアップと言えるものなんじゃないでしょうか。
この辺りの時間帯から、ザヘディ選手の疲労からかマークが緩くなってきて、グスタ選手がボールを持てる時間が増えてきます。そして58分に、福岡はザヘディ選手に変えてウェリントン選手を投入。ウェリントン選手はさらにグスタ選手へのマークが緩いというかしてなかったようなので、グスタ選手はさらに楽になりました。もう中盤の3人がボールを受けれる状態が続き、押し込めるようになります。
58分、浦和も久々の先発だった大久保選手に変えて大畑選手を投入。少しの間は、大畑選手はウイングのポジションでプレーしましたが、程なくして、本来のサイドバックのポジションに戻ります。
ここからリョーマ選手の攻撃のポテンシャルが溢れ出す時間となっていくのです。61分のサンタナ選手とのレイオフからの惜しいシュートを放ちます。その直後の64分、佐藤選手起点の縦パスを受けた右サイドの酒井選手がファー気味のクロスをあげ、直前に前に動いて相手ディフェンダーを釣り出すような動きを見せて撹乱させてのワンタッチゴール。才能あふれるゴールでした。現地では、大旗が目の前にあって、旗に隠れてゴールが見えづらかったのですが、屈んでかすかにリョーマ選手のゴールが見えました。
攻勢を強める浦和は、68分、またも佐藤選手の鋭い縦パスを起点にチャンスを作ります。パスを受けた岩尾選手が技ありのワンタッチでのロングフィードを右サイド裏に供給。それを受けた前田選手が相手を振り切りシュート。相手ディフェンダーのハンドを誘ってPKを誘います。このプレーは、全体的にスピード感があり、それにより相手選手が対応が明らかに遅れていたと思います。このPKをサンタナ選手が思い切りよく決めて、逆転。サンタナ選手もPKではありながら、得点が取れたことで、気分的に少し吹っ切れたのではないかと思います。これまでの試合に比べて、明らかにサンタナ選手へのボールの供給は増えていますし、これからの爆発を期待します。
そして昨年明らかに浦和キラーとなった紺野選手が74分にベンチに下がります。これはいいニュースでした。ちなみに、マッチデープログラムに「レッズの天敵」とまで書かれていました。これを見た浦和レッズサポーターの紺野選手のお父さんの気持ちを察するに複雑なんだろうなと思いますし、彼には親孝行のために浦和に移籍して欲しいと思います。
76分、敦樹選手に代えて中島選手を投入。ダブルボランチ化して守備を安定化させながら、攻撃を活性化させて行きます。
85分から86分にかけて、ワンタッチパスが多く見られたパス交換は、余裕を感じるとともに、相手が寄せる隙を与えず、素晴らしかったと思います。最終的には、右サイド裏まで進入した酒井選手にボールが渡るという良い流れ。ヘグモ監督が就任当初から口にしていた”dominate”という言葉から、これがしたかったんだなと思いました。
88分の中島選手のシュートに至ったシーンは、この試合で一番見応えがあるというか、ワクワクするプレーでした。グスタ選手、中島選手、リョーマ選手、大畑選手とつなぎ、岩尾選手の絶妙なスルーパスが、ポケットに進入した中島選手に通り、シュート。惜しくもゴールにはならなかったものの、素晴らしいシーンだったと思います。
終盤、佐藤選手の守備ブロックや西川選手のクリアに助けられたシーンもありましたが、終わってみれば、福岡を圧倒し昨年の雪辱を果たせたと思います。
印象的だった選手たち
完全なチームの核であることが証明された 岩尾選手
この試合のマンオブザマッチは間違いなく岩尾選手でしょう。
これまで、自分は岩尾選手とグスタ選手の同時起用を切望してきましたが、スタメンを見て絶叫してしまいました。やっとヘグモ監督が聞いてくれたんだと。なんてそんなわけないですが、明らかに自然な流れだったと思います。これがスタンダードになったことが証明された試合になりました。
攻守に渡って素晴らしいプレーがありすぎて、一つ一つのプレーを挙げようとするとキリがないほどでした。
グスタ選手がマンマークされて苦しんでいるなか、ビルドアップの出口になる役割が素晴らしかった。またグスタ選手、リョーマ選手、中島選手との距離感や関係性が特に素晴らしかった。完全なチームの中心、核であること、欠かせない選手であることが改めて明らかになったと思います。
公開練習を見にいくと、練習前に監督としっかりコミュニケーションをとる岩尾選手の姿を見ることができます。監督のやりたいサッカーを真摯な姿勢で理解しようとするプロフェッショナルな姿勢は、心を打たれるものがあります。そんな彼の生き方に惚れてしまうんです。
才能が溢れ出る リョーマ選手
彼は、攻撃的なポジションで使わないと勿体無い!!それほど溢れる才能を見せてくれた試合だったと思います。
スタメンでの左サイドバックのポジションでも、今までの試合に比べて、上がるタイミングが素晴らしいなと感じました。クロスや、シュートなど攻撃チャンスを演出してくれていました。
また、すごいと思ったのがドリブル。54分に、ドリブルで紺野選手と対峙したシーンでは鋭い切り返しで、完全に振り切っていました。
そして、大畑選手が投入されて左ウイングに変わってから、明らかに輝きが増していました。やはり、左サイドバックは、大畑選手や石原選手を優先的に使って、リョーマ選手は攻撃のポジションで使うのがベストだと改めて感じました。
そして、「We are Diamonds」を歌っていた時に映し出された彼の表情とこれまでの彼のストーリーから察するに、「やっとここまできたんだ」という万感の思いだったのではないかと思います。それを見て、自分も感情移入してグッとくるものがありました。また、浦和サポーターである彼のお父さんにもおめでとうございますと伝えたいと思います。
ただ、まだまだ始まったばかりですし、もっともっと活躍してくれることを期待します。
また、これほど、浦和というクラブに感情移入してくれる選手はそうそういませんし、溢れるポテンシャルとともに、浦和サポーターのハートを鷲掴みにする選手であることは間違いありませんね。
ハートを鷲掴みにされている 佐藤選手
浦和サポーターのハートを鷲掴みにする選手と言えばもう1人、佐藤選手。たった2.5戦で、自分のハートは鷲掴みにされていまっています。
岩尾選手と同じで、素晴らしいプレーを一つ一つ挙げていけばキリがないほど。
本職の守備では、熱いプレーを見せてくれます。空中戦では全勝でないかと思われるほど。北ゴール裏から見ていても、ヘディングでは競っている選手に対して、頭一つ抜きん出て勝っています。
一対一では、強度高く、身体を張ったプレーを見せてくれます。52分にザヘディ選手へ強めに寄せたり、94分にペナルティエリア内での重見選手のドリブルシュートをタイミングの良いスライディングで封じるところなど素晴らしかったと思います。
そして、相手を引き寄せてビルドアップの起点にもなっていましたし、幾度となく鋭い縦パスを通して攻撃の起点となっていました。また、今までになかった、ショルツ選手のようなドリブルでの持ち出しを見せてくれるなどの成長も見られました。
スピードのある相手に対して、下がりながら対峙する守備がどれだけできるか?は未知数な部分はありますが、もう素晴らしい活躍を見せてくれています。
比較の対象としてあげて申し訳ないですが、昨年まで在籍していた岩波選手の絶好調の時を凌駕しているのではないかと思いほどのパフォーマンスを軽々と見せてくれていると思います。ショルツ選手が帰ってきた時、サブに下がるのは勿体無いレベルですし、ぜひ、ショルツ選手との組み合わせも見てみたい気がします。
ポテンシャルを発揮しつつある 中島選手
明らかにコンディションが鰻登りではないかと思える中島選手。
昨年夏に加入した当時は、正直、あのFC東京や代表の時に見せてくれたパフォーマンスはなく、しかも守備が軽く出場したらピンチを迎えるなど、監督としても使いづらい状況だったのではないかと思います。
しかし、今の中島選手は、キレッキレッだと思います。解説の水沼氏も「中島翔哉が戻ってきた」と言っていましたが、まさにそうだと思います。そして「動きを止めないのがいい」ともおっしゃっていました。加えて守備も、ボールロストした時もしっかり後追いしますし、守備意識もしっかりしてきたと感じます。
その動きから見ても、フィジカルに加えて、メンタル的にもコンディションが上がってきていることがうかがい知れます。
正直スタメンで見たい選手だと思います。
次の試合は、東京戦
次は、4月3日(水)国立競技場でのアウエイ東京戦です。
久々の水曜日の試合。この3連戦を連勝できるとかなり勢いがつきます。今節の流れを継続して勝利を手にしたいものです。
また、リョーマ選手、中島選手、佳穂選手は古巣対戦ですし、燃えていると思います。
雨予報ではありますが、国立競技場をホームジャックして、熱い応援でチームを勝たせたいと思います。
※なお、本記事の写真で、自分で撮影した写真以外は、浦和公式サイトの写真を引用させていただきました。