呪われた雨のホーム戦にさよなら
ヴェルディ戦で完敗で、堪忍袋の尾がキレた?というより、浦和に対する感情を失ったことからのホーム柏戦の個人的ボイコット。
そのことが少しでも効いたか?柏戦、横浜戦と、メンタリティを取り戻す兆しを見せてきた浦和。徐々に、スタジアムに足を運ぶ気持ちが芽生え始め、ホーム広島戦はスタジアムに行く気になってきました。
しかしながら、心配していたのは雨。濡れるのを避けていたわけではありません。濡れるのはへっちゃらです。理由は、それまでの雨のホーム戦は連敗だったからなのです。
・7/6 湘南戦 2-3
・7/20 札幌戦 3-4
・8/7 柏戦 雨天中止
・8/24 川崎戦 前半で雨天中止
・9/21 東京戦 0-2
・10/5 セレッソ戦 0-1
これだけ並べてみると、雨天中止も2試合含まれるなど、呪われているとしか思えませんでした。埼玉スタジアムで行われる日本代表の試合は雨が降らないのに。サッカーの神様が浦和に試練を与えているとしか思えませんでした。
そして10/23の柏との再試合は、雨が降らずかろうじて勝利。
ということは、広島戦、雨が降らないことが勝つための絶対条件だと信じていました。なので絶対に雨が降るな!と祈りつつ、スタジアムに向かいました。そして雨は降らなかったのです。
試合全体を通して
メンタリティの向上、全員が戦っていた
戦う姿勢が見えなかったヴェルディ戦。本当に愛想を尽かした試合でした。
その試合と比べて、この試合は全員が戦っていた、ハードワークしていました。
前半は、広島の危険な攻撃に何度となくさらされましたが、相手ボールホルダーに対する寄せが早く、最後はやらせません。マチェイ監督復帰戦のガンバ戦で見せた組織的な守備が戦術として定着した上で、メンタリティが向上したことでより強固な守備が構築できてきたという印象です。
メンタリティが上がってきた要因に、J2降格が忍び寄ってきた緊張感もあったに違いありません。ちょっと遅い気がしますが、いい意味での緊張感になっていたのかもしれません。
耐える守備が本物になってきた
この耐える守備は、来年のクラブワールドカップを見据えると非常に重要になってくると思います。なぜなら、対戦相手が全て格上だからです。守備の時間が長く、相手の攻撃にさらされる時間が長くなるのが確実です。そんな中、勝ちを得るためには、耐える守備・強固な守備がキーになります。
対戦相手の広島の置かれた状況としては、昨年の浦和と同様の過密日程。シーズン終盤の優勝争いをする中、ACLの予選を戦わないといけない。そんな中迎えたこの試合で、開始早々から集中攻撃してきた広島は、早く試合を決めたかったのだと感じました。
解説の水沼さんが言っていましたが、それが逆に浦和の守備の集中力を上げてしまった、段々と守備の仕方に慣れてきたと思います。前半の30分まで広島の猛攻に耐えたことが、浦和に流れを持ってくることができた勝因だと思いました。
攻撃戦術がハマっていた
辛口に言えば、これまでは攻撃戦術が正直見えない試合が続きました。しかし、この試合はしっかりとそれと分かる内容でした。
超攻撃的だった3バックの一角の中野選手
広島は、15番の中野選手が3バックの一枚でありながら、超攻撃的でした。ミシャ監督時代の森脇選手、槙野選手のようでした。
ゴールエリアスレスレまで進出してきて、そこからポケットに侵入したり、ミドルシュートを放つなど攻撃に厚みを出していました。ゴール裏で見ていると、後ろから突進してきて本当に危ないし、目立った存在でした。
しかしながら守備面でいうと、中野選手は松尾選手や関根選手とのスピード勝負を強いられていました。結果的には、松尾選手のゴールを許してしまいます。
広島の守備の綻びを狙った浦和の攻撃戦術
浦和の攻撃戦術として考えられるのは大きくふたつありました。
①中央のリンセン選手、凌磨選手がサイドに叩いて展開して、サイドの松尾選手、関根選手がスピード勝負する。
②西川選手のゴールキックで右サイドの関根選手の頭を狙い、その落としを拾って、逆サイドの松尾選手に展開しスピード勝負する。
広島の守備を見てみると、
①の場合、3バックの中央の荒木選手がリベロというよりかは、中央で凌磨選手やリンセン選手に釣り出されることが多く、そこからサイドに展開されると、中野選手が松尾選手や関根選手と一対一になってしまうシーンが多くありました。
②の場合、関根選手に負けてしまい、広島の左サイドを攻め込まれてしまい、右サイドが手薄になり、そのうちサイドチェンジされ、中野選手が松尾選手と一対一となってしまう。
これこそが浦和が事前に練っていた苦手の3バックチームへの戦略だったのかもしれません。
また、ボールを持たせたのも戦略の一つだったのかもしれません。持たされることに慣れていない広島のような気がしました。ハイプレスからのショートカウンターを得意としていると考えると、自らがボール保持する展開は予想外で不得意だったのかもしれません。
そして、シュートが多くても焦る必要がなかったのです。シュートの数は、相手のシュートが多すぎるのはリスクが増えるし、いいことではありませんが、そもそも広島はシュートを打つチーム。その上でゴールが入らないということは、現状決定力がないと言えます。
試合内容
前半は圧倒されるもしっかりと守りきった
立ち上がりが重要だとは思っていました。ある程度は慎重な進め方をするのではないか?とは予想していましたが、あそこまで攻められまくるとは思いませんでした。
立ち上がり5分ほどは、ずっと浦和のゴールに釘付けにさせられました。広島の攻撃は、どんどんと後ろから選手が湧いて出てきて、縦パスをどんどん通され、サイドチェンジやクロスが飛び交う浦和ゴール前。昨年の浦和のような厳しい日程の晒されながらも、広島の優勝への執念を感じました。
そんな状況が30分ほど続いた中、浦和はしっかりと守備を固めて耐え忍びました。18分の時点でシュートが広島10本、浦和0、数字に表れていました。そんな中、浦和はいくつかのコンビネーションは見せていました。8分に、左サイドを縦に突破した松尾選手が中央の関根選手にパスし、リンセン選手に繋ごうとしたシーン。16分に右サイドの凌磨選手から、リンセン、松尾、凌磨選手と繋ぎ、最後は長沼選手に通らなかったものの可能性のあるプレーを見せてくれていました。
30分を過ぎると、広島も攻め疲れたのか?ACLのオーストラリアからの移動の疲労が出てきたのか?広島の守備が徐々にルーズになっていきます。
そしてだんだんと浦和の攻撃シーンが増えてきました。37分に松尾選手のシュート。42分には、安居選手からリンセン、凌磨、関根選手と繋いで関根選手がシュートしますがゴールには至りません。
個人的には、前半は0-0でOK、あれだけ広島の守備を凌いだのだから!と思っていた44分、ついにサッカーの神様が微笑みました。
右サイドの石原選手が凌磨選手に縦パス。それをトラップして関根選手にパス。関根選手は、相手を引き寄せながらも、逆サイドというより中央にポジショニングしていた松尾選手にパス。スピードに秀でる松尾選手と一対一になってしまった広島の中野選手は、その脅威にあわてたかのように、関根選手からのボールを後逸してしまいます。そしてキーパーと一対一になった松尾選手は左隅に冷静なシュートを突き刺し先制ゴールを奪います。
松尾選手は、試合前の練習でもいつもライナー性の鋭いシュートを何本も決めていますし、シュートのうまさはチーム随一だと思います。素晴らしいゴールでした。
前半終了間際に、石原選手がボールキープする背中からトルガイ選手がアタックしてきて、石原選手がうづくまってしまいました。あとでDAZNの映像をみると、石原選手の首か背中の辺りを完全に肘を使って押し下げようとしていました。危険なプレーでカードを出して欲しかったですし、明らかに彼らの焦り、苛立ちを感じたシーンでした。
思っても見なかった展開で、浦和リードで折り返すことになりました。
後半の立ち上がりは素晴らしかった
後半の立ち上がりは、前半と逆で浦和ペース。この5分で、5本のシュートを放ちます。48分の石原選手のセカンドボールを拾ってのシュートはクロスバーに弾かれましたが、惜しいシーンが続きます。文字通りの猛攻です。
そして、55分、右サイドの関根選手のトラップから、左サイドの松尾選手に展開。松尾選手のシュート性のボールをリンセン選手が見事に頭で合わせてヘディングシュート。これぞ!リンセン選手といったゴールを見せてくれました。
60分時点でのシュート数は、浦和7本、広島1本と数字上でも前半と逆の展開です。
それ以降、段々とグスタ選手がフリーでボールを持てるようになってきて、本来の持てるサッカーができるようになってきました。
反面、トルガイ選手の危ないスルーパスや、それを絶妙のタイミングで裏に飛び出し受ける加藤睦月選手。幾度か、西川選手との一対一になる危険なシーンもありましたが、本来の加藤選手らしからぬシュートミスで命拾いします。彼は、セレッソ時代もそうでしたが浦和キラーで、浦和の試合では決定的なゴールを何度も決めています。前田選手も長沼選手も浦和キラーでしたが、今は浦和の選手。加藤選手は埼玉出身ということで、ぜひ将来浦和の選手になってほしいと思ってます。
75分には、関根選手、リンセン選手に代えて、サンタナ選手、前田選手を投入。79分には早速、その二人でチャンスシーンを作り出してくれます。前田選手がサンタナ選手にスルーパスをし、サンタナ選手がヒールで前田選手に戻しましたが、前田選手がうまくボールをトラップできず、シュートには至りませんでした。しかしながら、良いコンビネーションを見せてくれたシーンでした。
80分には、松尾選手に代えて元気選手を投入。その直後負けられない広島は、ソティリウ選手、ドウグラス選手を投入。焦りのフォワード4人投入で、予想通り前線の大渋滞となってしまいます。昔、ミシャ監督もビハインドの試合で錯乱したかのようにフォワードを投入していましたが、結局うまくいかないんですよね。スペース消しあっちゃいますからね。
そうこうしているうちに、85分浦和のカウンターチャンス。浦和の右サイドに下がってボールダッシュしたサンタナ選手が中央の凌磨選手にパス。そして右サイド裏に凌磨選手のワンタッチパスが通ります。このパスが秀逸だった。そして広島の荒木選手が凌磨選手に食いついてしまい、中央を開けてしまいます。その凌磨選手のパスを彼らしいスピードで受けて前進した前田選手が、中央の元気選手にラストパスを通し、元気選手が落ち着いて決めて、3-0。試合を決定づけるゴールでした。
ロスタイムに危ないシーンがありましたが、武田選手のスーパークリアに助けられて、シャットアウトを達成することができました。
ヒーローのふたり、大活躍でした。
6/30のジュビロ戦以来の”We are diamonds”、待ってました!
印象的だった選手たち
この試合は全員が素晴らしかったと思います。みんな印象的でしたが、あえて上げるとしたらこの選手たちでした。
見事だった攻撃の展開力 関根・凌磨・リンセン選手
中央で叩いて、サイドや裏に展開し、サイドの選手が追い越していく。
この試合で何度となく見られた攻撃戦術の中心だったのが彼らでした。大活躍と言っていいと思います。
リンセン選手、凌磨選手は中央で張りながらもちょっと下がり目のポジショニングからサイドに展開し、特に松尾選手の一対一ができるシーンを演出していました。また、荒木選手をうまく吊り出していたことも効果的だったように思います。
関根選手はサイドでヘディングでボールを収めながら逆サイドへサイドチェンジを見せるシーンが多くあって、これも松尾選手のチャンスを演出していました。しかも、関根選手は、右ウイングとしての突破からのシュートシーンを幾つも作り出して大活躍だったと思います。
そしてリンセン選手は、彼の真骨頂というべき、クロスに点で合わせるヘディングシュートで得点を奪いました。素晴らしい活躍でした。
迫力のある鋭いヘディングシュートとは裏腹に、ゴール後の”あたっちゃった!”と言わんがばかりのお茶目な表情は何かほっこりするものがありました。
スピードとシュート力は特筆すべき 松尾選手
ウイングが試合を決定づける。この試合で見せた攻撃の展開は、もしかしたら本来ヘグモ監督がやりたかった展開だったのかな?とも思いました。
中央の選手が、サイドの選手が一対一で勝負できるお膳立てを見せて、その上で、松尾選手のようなスピードを持った選手が相手を抜き去り決定力を見せる。
まさに、戦術松尾と言わんがばかりの試合でした。
また、チームをなんとしてでも勝たせるというメンタリティも素晴らしいものがありましたし、今後もチームの中心となって活躍して欲しいと切に願います。
お帰りなさい 元気選手
そして、松尾選手の同ポジションでのライバルでもある元気選手が、お帰りゴールを決めてくれました。試合を決める得点であること以上に、復帰後初ゴールは嬉しかった。
浦和を離れて歩んできたこれまでの彼のサッカー人生を想像した時に、決して思った通りのサッカー人生ではなかったと思います。浦和時代に見せてくれた、ドリブルで左サイドを切り裂き、斜め45度からの元気ゾーンからのシュートを決める。そんなプレーは封印しなければ生き残れなかったのでしょう。一区切りつけて、浦和に復帰した今、そんな元気選手らしい本来のプレーをわがままにやること、それは本来の自分を取り戻すことになるのではないかと思うのです。自分が社会人を引退した身であり、本来の自分を取り戻せている今だからこそ、彼の気持ちがわかる気がします。
大人になった元気選手は、ワガママにプレーしようとしてもチームを考えて行動するに違いありません。そんな中にも少しでもワガママなプレーを取り戻して、本来の元気選手を取り戻してくれれば、サポーターたちはこれほど嬉しいことはないと思います。
何か、書いていてうるうるしてきました。そんな嬉しい復帰後初ゴールでした。
安定した一対一の守備 長沼選手
この試合、大畑選手に変わって左サイドでスタメン出場した長沼選手。どんなプレーをするのか?スタメンを見てワクワクしていました。
自分が立っていた北ゴール裏下段のバックスタンド寄りの席からは、左サイドの長沼選手が目の前です。彼のプレーをよく観察することができました。
この試合での長沼選手は期待以上のプレーで素晴らしかったと思いました。
最初に思ったのは、相手選手へのアプローチがタイミングが早く、鋭いこと。相手の右サイドの新井選手にボールが渡ると、スルスルっというより、スーッと吸い付くように相手との間隔を詰めていきます。この感じは大畑選手にはなかった感覚。相手は、かなりプレッシャーを感じると思いました。積極的ではありながら、最初は上がりすぎなのでは?と感じました。しかし、一対一に持ち込むとかなりの確率で勝ってくれるのです。
25分に、その新井選手とのバトルに勝ち、ドリブルをしながら右に展開していったシーンは素晴らしかった。
49分に今度は中央に進出してグスタ選手のスルーパスを受けてシュートするなど、攻撃面でも存在感を見せてくれました。
この試合で、90分間左サイドで安定したプレーを見せてくれた長沼選手。かなりチームに慣れて今後が期待できる状態だなと感じました。浦和キラーとして得点を重ねた時と同じような活躍を今後期待しています。
メンタリティの継続を期待
しかしながら今回快勝したからと言って、J1残留を決めたからと言って、これは本来の姿ではありません。
本来、優勝争いをしているべきチームなのですから。不甲斐ないのは変わりません。
この試合で見せてくれたメンタリティを継続して、残りの試合を全て勝ち切って、クラブワールドカップが控える重要な来季へと確実に繋げていってほしいと、切に願います。
次の試合は、ホーム川崎戦
次は、11月22日(金) 川崎フロンターレ戦です。
8/24、ずぶ濡れになりながら、前半を1-0とリードして終わった試合の再試合です。
リードしている状況で始められる優位性はありますが、気を緩めることなくメンタリティ高く勝ち切ってほしいと思います。
※なお、本記事の写真は、自分が撮影した写真以外は、浦和公式サイトの写真を引用させていただきました。
(おまけ)
帰路の途中、大原練習場付近でチームバスを見つけました。かっこいい!選手を送った帰りかな?お疲れ様でした。