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脱炭素社会と自動車業界【「電気自動車メカニズムの基礎知識」を読んで学んだことと深掘り】

電気自動車の技術進化どうなっていくのか?

ということに興味が湧き、手に取ったこの本。

題名:きちんと知りたい! 電気自動車メカニズムの基礎知識
著者:飯塚昭三
発行:日刊工業新聞社

最初に書いたまとめ記事には、全体的な感想をまとめてみました。

まとめ記事【「電気自動車メカニズムの基礎知識」を読んで学んだことと深掘り】電気自動車の技術進化どうなっていくのか? 在職時は、ハイブリッド車が主流になりつつあるものの、電気自動車を主体として開発するような状況...

今回は、そこから注目した部分に関して、深掘りしていきたいと思っています。

今回は、自動車業界や社会の未来についてです。

カーボンニュートラルを目指した自動車業界や社会の未来

本書では、電気自動車のメカニズム基礎知識という内容なのですが、大前提から始まっています。

・カーボンニュートラルを目指す社会はどういうものなのか?
・なぜ電気自動車なのか?
・電気自動車が産業に及ぼす影響は?

ここ数年、「自動車業界は、100年に一度の変革期」と言う言葉をよく聞きます。それは、どういうことなのか?がよくわかる内容になっています。

カーボンニュートラルを目指す社会とは?

そもそも、カーボンニュートラルとは?

地球全体での気候変動、それによる甚大な自然災害が発生する頻度が増えてきています。これは、CO2を代表とする温室効果ガスが地球を温暖化させることにより起こっている事象なのです。人間が排出するCO2の発生を抑えないと、この事象が悪化していくのは自明の理となっています。

そこでカーボンニュートラルという言葉が登場します。【環境省】カーボンニュートラルとは?から引用させていただきますと、

カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」 から、植林、森林管理などによる「吸収量」 を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

※人為的なもの

カーボンニュートラルの達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減 並びに 吸収作用の保全及び強化をする必要があります。

将来の世代も安心して暮らせる、持続可能な経済社会をつくるため、地球に生きるすべての人々が、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて、取り組む必要があります。

Tank to Wheel/Well to Wheelとは?

クルマにまつわるカーボンフリーを達成する領域を示す用語があります。

環境省資料にわかりやすい図がありましたので引用させていただきます。

まず、自動車メーカーの立場で考えた時には、燃料などのエネルギー源を注入してCO2をできるだけ低減して走行するクルマを作ること。それが自動車メーカーの役割です。この考え方をTank to Wheel(燃料タンクからタイヤを駆動するまで)と言います。

ただ、その燃料などのエネルギー源がどのように作られているかも含めて、トータルでCO2の発生を抑えようという考え方がWell to Wheel(油田からタイヤを駆動するまで)と言います。

さらに、クルマの材料の製造過程から部品や車両の製造、廃棄に至るまでのクルマのライフサイクルを考えたすべての領域でCO2の発生を抑えようというのがLife-cycle Assessmentという考え方です。

ここまでくると自動車産業の領域を遥かに超えた、社会構造全体を変革する壮大な産業革命であることがわかりますね。

クルマ単体ではなく広い視野でCO2削減のアプローチが必要

この考え方の一例として、BEV(バッテリーEV)は外部から電気エネルギーが供給されて走行する電気自動車について考えます。

Tank to Wheelの観点では、CO2ゼロを達成できます。ただ、日本においては、石油や石炭による火力発電がメインになっていてWell to Wheelの観点ではどのみちCO2を発生させてしまうのです。でもヨーロッパは自然エネルギーや原子力発電がメインなのでWell to Wheelの観点でもCO2ゼロを達成できます。

そういう意味でそれぞれの国のエネルギー政策において、CO2削減に対しての手段が変わっていくのです。日本はまだ、HEV(ハイブリッドEV)の賞味期限は残されています。つまり、クルマ単体ではなくて広い視野でCO2削減に対してのアプローチを考える必要があるのです。

世界や国のエネルギー政策の根本から大きく改革していくべき大変革期。こんな話を聞いていると、その一部である自動車業界がちっぽけに見えてきました。それほどスケールの大きい話だということがわかってきます。

なぜ電気自動車なのか?

話が大きくなりすぎてしまいました。クルマの話に戻ります。

電気自動車は基本的に電気エネルギーでモーターを駆動して走行するクルマです。

ただ、電気エネルギーをどう供給するかの違いがあります。この方式によって、ガソリンの燃焼量を極力減らしてCO2を発生させないレベルから、クルマ自体で全くCO2を発生させないレベルまでの違いが発生します。

ただ、CO2の発生を抑えるという意味でカーボンニュートラルに貢献できるクルマが電気自動車ということなのです。

現在の電気自動車は、大きく分けて4種類

① HEV(ハイブリッドEV)

  ガソリン→エンジン→モーターで発電→バッテリーに充電→モーターを駆動

② PHEV(プラグインハイブリッドEV)

  ①の方式に加えて、プラグ経由で外部からバッテリーに充電→モーターを駆動

③ BEV (バッテリーEV)

  プラグ経由で外部からバッテリーに充電→モーターを駆動

④ FCEV  (燃料電池車)

  水素→FCスタックで発電→モーターを駆動

クルマでガソリンを燃焼させる①、②については、CO2を発生させる意味ではネガティブであり、過渡的な技術として、先細っていく技術になります。

③、④の方式に、クルマ単体でCO2を発生させないクルマになっていくのが、自動車産業の方向性になっています。

究極の環境車 FCEV(燃料電池車)

電気自動車の中でも、FCEVは究極の環境車として注目されています。

BEV(バッテリーEV)は、バッテリーに充電して、その電気エネルギーで走行します。ただ、以下のようにネガティブな部分もまだまだ多いです。

・充電インフラがまだ少ない
・充電時間が長い(ガゾリン給油に比べて)
・車両価格が高くなる(バッテリーに使われるリチウムなどのレアメタルと呼ばれる金属はそもそもレアと呼ばれるだけあって希少かつ高価で車両に跳ね返ってくる。)
・電気の供給不足に影響される
・電気代の高騰に影響される

これを考えるとBEVだけの一本足打法は、経営としては不安に思えます。

それを解決しようとするのが、燃料電池車。これもEVではありますが、水素をタンクに注入し、それを使って発電し、モーターを駆動。発電後の水素イオンは酸素と化合して水となり排出されるため環境に最もやさしいとされています。そこが1番のメリット。

また水素の注入はガソリンと同等の時間でできるとのことですが、こちらも充電スタンドがまだ多くなかったり、システムのコストが高いなどの課題はあります。でも高価なバッテリーを小さくできたり、電気の供給に左右されないなどのメリットを考えると、この道もありなのかなと思います。

水素社会を目指して

FCEVのエネルギー源である水素はクルマという狭い領域にとどまらず、社会全体のエネルギーを作り出すという壮大なポテンシャルを持っているものなのです。

日本全体のエネルギー環境が目指すのは、脱化石燃料社会、「水素社会」なのです。

このお話は、将来に向けた大事なトピックですし内容も多いので、こちらの記事で深掘りしていきます。

水素社会を目指して【「電気自動車メカニズムの基礎知識」を読んで学んだことと深掘り】水素社会 FCEVのエネルギー源である水素はクルマという狭い領域にとどまらず、社会全体のエネルギーを作り出すという壮大なポテンシャルを...

電気自動車が自動車産業に及ぼす影響

話を自動車業界に戻して、自動車産業にどう影響があるのかのお話をします。

EV化の流れ

従来のクルマの部品の中で、なんといってもエンジンやミッションが重量、容積を占め、走りの魅力を左右する部品でありました。古い人間にとっては、ツインカムとかVTECとかツインターボとか、エンジンにまつわる技術に心躍ったものです。

それらの部品は、部品点数が多く、産業としても下請けメーカー含めると、日本の産業の中心となる労働人口を占めていると思います。

ただ、昨今のカーボンニュートラルをターゲットにした自動車産業の流れは、確実に電動化に向かっています。EVは、充電環境やコストの面でまだまだ課題はあるものの、エンジン車に比べた優位性は以下のように圧倒的。

・モーターは初期からトルクが立ち上がり、応答性が高い
・エネルギー伝達効率が高い
・部品点数が少ない

なので、自動車がEV化に向かっていくのは自然なことだと思いますし、エンジンミッション開発の先行きが先細りになっていくのは明らかです。

産業構造の変化

従来、自動車メーカーが内製でエンジン開発を行なって、他社との差別化を図っていたのですが、今後電動化されていくとそれが難しくなります。モーター、インバーター、バッテリーなどの部品は、それぞれの専門メーカーが開発し、ユニットで納入していく形になっていくであろうからです。

本書には、産業の構造が、従来までの自動車メーカーを頂点にして下請けメーカーがぶら下がる「垂直統合型(すり合わせ型)」から、モーター、インバーターなどの専門性の高いメーカーが自動車メーカーと対等になる「水平連携型(モジュール型)」になっていくというのです。

ここで言う「すり合わせ型」という言葉は、日本の産業をイメージするにぴったりの言葉だと思うんですね。あくまで自動車メーカー主導。下請けは上からの要望を細かく聞いて、それを忠実に実現していく。例えるならば、先頭車両だけ駆動している電車。そんなイメージです。

それが、「モジュール型」になっていくと、海外産業の仕事の仕方になっていくと思います。モーター、インバーター、バッテリーメーカーが主導権を持ち、自動車メーカーの言いなりにならず、台頭に戦い開発していく。例えるならば、すべての車両が駆動している電車。これは産業の構造としては健全ではありますが、従来までの自動車メーカーの立場からすると、やりにくくなるのと差別化が難しくなるのが目に見えています。ただ、自動車メーカーとしてはこの流れは止めることはできないので、順応せざるを得ないのです。

なので、自動車メーカーはさらに上位の考え方で物事を考える必要性が出てくるのです。他社と差別化されたモビリティとしての新価値を新たに消費者に提供していかないと生き残れない時代になっています。

ただ電動化に関しても課題は大きく、その課題を解決するために、発電の仕方、送電、充電の仕方、バッテリーのリユースなど数多くの産業が生み出されます。

なくなっていく部品を開発していた部品メーカーは新たな領域を開拓しなければ生きていけません。

産業構造の変化、新たに生まれる産業、消えていく産業、そんなことで「自動車業界は、100年に一度の変革期」と言われているのです。

まとめ

今回は、カーボンニュートラルを目指す脱炭素社会とは?それに伴って自動車産業がどう変わっていくのかについて、本書を参考にしながら深掘りしてみました。

自動車業界にいながらも、役責のある専門的な仕事に没頭するため、全体を俯瞰し系統立てて考えることがなかなかできませんでした。なので、今回、本書をきっかけに社会のあり方から俯瞰して自動車業界の進んでいく方向性を学んでいけたらいいなあと思っています。

次回は、注目した「水素社会」について深掘りしていきます。

 

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