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テクノロジー

バッテリーへの取り組み【「電気自動車メカニズムの基礎知識」を読んで学んだことと深掘り】

電気自動車の技術進化どうなっていくのか?

ということに興味が湧き、手に取ったこの本。

題名:きちんと知りたい! 電気自動車メカニズムの基礎知識
著者:飯塚昭三
発行:日刊工業新聞社

最初に書いたまとめ記事には、全体的な感想をまとめてみました。

まとめ記事【「電気自動車メカニズムの基礎知識」を読んで学んだことと深掘り】電気自動車の技術進化どうなっていくのか? 在職時は、ハイブリッド車が主流になりつつあるものの、電気自動車を主体として開発するような状況...

今回は、そこから注目した部分に関して、深掘りしていきたいと思っています。

今回は、バッテリーについての取り組みです。

バッテリーの重要性

バッテリーの役割は、簡単にいうとモーターを駆動するエネルギーである電気を一時的に蓄えるもの。エンジン車で言えば燃料タンクのようなものです。

バッテリーの性能によって、高性能なバッテリーであればより多くの電気エネルギーを蓄電することができ、走行距離も稼げますし、充電時間もより少なくすることができます。

またバッテリーは床下にレイアウトされるため、従来のエンジン車に比べて低重心にすることが可能です。

ただバッテリーのネガティブな部分としては、重量増になること。軒並み2トン以上の車ばかりです。重心高は下げられるものの、運動性能にも悪影響があります。

またコストは高く、車両コストのうちかなりの割合を占めるため、車両のコストに大きく影響します。

バッテリーの性能

内燃エンジンでは、燃費がエネルギー効率を図る一つの指標でしたが、EVにはバッテリーの性能を表す、エネルギー密度と出力密度というものがあります。

今現在、この二つの指標を伸ばすことが、バッテリーの性能向上の目標となっています。

エネルギー密度とは?

本書によると、エネルギー密度の定義はこうです。

エネルギー密度とは、一定の重さあるいは容積に対してどれほどのエネルギーを持っているかという指標で、Wh/kgまたはWh/Lの単位で表します。

つまり、エネルギー密度の高いバッテリーは、同じ容積で多くのエネルギーを蓄電できるため、EVにおいて航続距離を長くすることができます。

現在主流のEVに搭載されているリチウムイオンバッテリーでさえも、内燃エンジン車の航続距離に比べてまだ十分ではないという状況です。

なのでバッテリーのエネルギー密度をさらに向上させ航続距離距離を伸ばすことが求められます。まずは、内燃エンジン車並みにする。またさらに向上させると、航続距離が余分に増えるため、バッテリー重量を減らすことが可能となるのです。

つまり、エネルギー密度は高ければ高いほどいいのです。

出力密度とは?

対して出力密度とは何か?定義はこうです。

出力密度は同様に一定の重さまたは容積に対してどれだけの出力を発揮できるかの指標です。単位は、kW/kgまたはkW/Lです。

どれくらいの勢いで出力できるかを示していて大きければ大きいほど大出力のモータを駆動することが可能になるのです。

反面、出力密度が大きければ、充電に関しても大きな電力を受け入れられるので充電時間の短縮につながるのです。

電池の発明と進化

リチウムイオン電池

電池の歴史はこうです。

1800年にイタリアのボルタが電池の原理を解明して電池を発明。
その後充電可能な電池(二次電池)として1859年にガストンブランテが鉛電池を発明。
その後1990年代に日本でニッケル水素電池(三洋電気、パナソニック)、リチウムイオン電池(ソニー)が発表され、日本の技術力の高さを示しました。

リチウムイオン電池の特徴は本書の解説によるとこうです。

リチウムは、-3.045と元素の中で最も電位が低く、またイオン化傾向の大きさも一番です。リチウムイオン電池は3.6Vと最も大きな電圧が得られ、エネルギー密度も高く、放電特性の面でも電圧低下が少ないのが特徴です。

ただ、課題もあります。

リチウムイオン電池は電解質に液体の可燃性物質を用いている。この電解質に異物などが混入するとセパレーターが破損してショート、発熱する。これにより発火や破裂を引き起こす。

リチウムイオン電池は、現在量産されている電気自動車のほとんどがリチウムイオン電池が搭載されていると言えます。

ただ、リチウムイオン電池搭載の車両でも内燃エンジンの車両の航続距離に比べて5〜7割にとどまっているということです。そのためには、さらなるバッテリーの技術進化が求められているのです。

電池の基本原理

ここで今後の解説のために、リチウムイオン電池の基本原理を本書の解説をもとにお話しします。基本構成は以下の通りになっています。

正極(リチウム化合物)
電解液(有機電解液)
セパレーター(電極を絶縁する。リチウムイオンが通過可能な膜)
負極(グラファイトなどのカーボン系材料)

充電時はその逆の流れ。

①正極のリチウム化合物がリチウムイオン(Li+)して自由電子を放出する。
②自由電子は、外部回路を通って正極に向かう。
③イオンは電解質とセパレーターを通して負極側に向かう。
④負極に到着したリチウムイオンは外部回路を経由して流れてきた電子と共に取り込まれる。
⑤これにより、正極と負極の間に電位差が発生する。(充電されているということ)

放電時の流れとしては、

①正極と負極を外部回路でつなぐと、充電されて電位差がある状態を解消するように、負極のリチウム(Li)がリチウムイオン(Li+)して自由電子を放出する。
②自由電子は、外部回路を通って政正極に向かう。
③イオンは電解質とセパレーターを通して正極側に向かう。
④正極に到着したリチウムイオンは外部回路を経由して流れてきた電子と共に取り込まれ、リチウム化合物(コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウム)となる。

次世代のバッテリー技術 全固体電池

さらなるバッテリー性能向上のため、多くの自動車メーカー、電気電子メーカーで全固体電池の開発が進められています。

全固体電池とはどんなものなのでしょうか?

簡単にいうと、先ほどのリチウムイオン電池の解説に出てくる電解液とセパレーターが固体の電解質になっているというのが特徴です。リチウムイオン電池のところで課題としてお話ししたように、電解質に液体の可燃性物質を使用しているため安全性の点で課題があります。

それを固体にすることで、こんなバッテリー性能の向上効果があります。

固体の電解質は液漏れなどの危険性がないうえ、必要なイオンだけが正極と負極の間を移動するので、電極と液体が反応して劣化する恐れはない。そのため全固体電池は車載用二次電池として安全性・耐久性を確保しながら、より一段の高エネルギー密度化・高出力化が可能になる。

航続距離を伸ばす効果は以下の通りです。

全固体電池は、リチウムイオン電池の2倍程度の蓄電量が可能になると言われている。リチウムイオンを搭載したEVの航続距離は350kmが限界とみられ、ガソリン車の1回の給油での走行距離(600km程度)より見劣りしているが、その短所を解消できると期待されている。

この技術が量産されれば、現在のEVの課題のうちの重要なものの一つである航続距離の課題が解消されます。素晴らしい飛躍的な技術であることは間違いありません。

自動車メーカーで言うと、トヨタや日産、ホンダは、全固体電池の技術開発を推進していると表明していますし、電池メーカーも黙っていないと思います。

2020年代でのEVの覇権争いに直結するこの全固体電池の技術開発レースは、目が離せませんね。

使用済み電池のリユース

廃車された電気自動車のバッテリーはどうなるか?みなさんご存知ですか?

容量が例えば70%以下になったとしても使えないわけでないので、リユースされるとのことなのです。

電力安定化の補助電源として使用したり、施設の定置用電源として使用したりとさまざまなリユースが検討されているそうです。

資源を無駄にしない。素晴らしいことですね。

バッテリーのリユースについては、各社の取り組みについてこちらの動画が勉強になりましたので、引用させていただきます。(1年前と少し古いですが)

・日産は、初期型リーフのバッテリーが寿命迎え始めており、バッテリーのリユース事業を立ち上げている。用途としては、踏切の保安装置用電源や離島の電源、自社の工場での蓄電池として利用しようとしている。
・テスラは、原材料の回収・再利用に目を向けている。(脅威の95パーセント回収率。永久的にリサイクルすることを狙っている)
・VWは原材料の回収とバッテリーのリユースの双方に取り組んでいる。(傘下のAUDIは、使用済みバッテリーを急速充電器に内蔵し安定供給に貢献している。)

貴重な金属資源をリサイクルできる技術は、コストや原材料の供給の観点で大きなメリットがあります。また、リサイクル事業をしっかり考えており、雇用を産むという観点や、他の産業や社会に貢献できるという観点で、素晴らしいことだと思います。

V2Hとは?

また、最近よく聞く言葉、V2Hという言葉、みなさんご存知ですか?

本書にある解説はこうです。

「Vehicle to Home」の略で、電気自動車などに搭載されている二次電池に蓄えられる電力を、分電盤を介して供給する仕組みです。割安な夜間電力でEVを充電し、昼間にそのEVに蓄えた電力を使えば電気代が節約できます。このことは、電力需要のピークシフト、すなわち平準化の役割を担えることを示しています。

最近の電気料金の値上げで夜間料金という形態がなくなってしまうかもしれませんが、停電や被災時などに充電してある電気自動車から少しでも電気が使えれば良いですよね。

V2Hのことについてさらにわかりやすく解説している動画を見つけましたので、引用させていただきます。

日産リーフe+は電池容量62kWh、日産アリアは電池容量65/90kWhなので、60kWhだとすると3から4日分の電力を家庭に供給できるとのこと。

また、太陽光発電からの余剰電力を電力会社に売電せずにEVに充電でき、無駄なく自家消費できることになります。

その他、類似の言葉で、V2Gは「Vehicle to Grid」で電気自動車から電力網に流す仕組み、V2Bは「Vehicle to Building」で電気自動車から企業などの建物や工場に流す仕組みを表しています。

まとめ

今回は、電気自動車にとって重要な部品の一つであるバッテリーについてのお話をしてきました。

自動車用バッテリーの性能が、電気自動車の性能に大きく関わってることもご理解いただけたでしょうし、それ以外にもリユースや、家庭や建物などへの電力供給にも貢献できることがお分かりになったのかなと思います。

今後は、全固体電池の量産化レースをどこが制して覇権を握るのか?ユーザーの立場からすれば航続距離が長く、充電時間が短く、価格の安いEVがいつ頃出てくるのか?ウォッチングしていきたいと思っています。

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