電気自動車の技術進化どうなっていくのか?
ということに興味が湧き、手に取ったこの本。
題名:きちんと知りたい! 電気自動車メカニズムの基礎知識
著者:飯塚昭三
発行:日刊工業新聞社
最初に書いたまとめ記事には、全体的な感想をまとめてみました。
今回は、そこから注目した部分に関して、深掘りしていきたいと思っています。
今回は、モーターの技術についてです。
モーターの基本原理
モーターは、電流と磁界と力の関係を利用するものです。磁石による磁界が存在する中で導線に電流を流すとその導線に力が発生し、その力を回転運動に変えるのがモーターです。電気エネルギーが力学的回転エネルギーに変換されるわけですね。
その原理については、こちらの動画がわかりやすかったので引用させていただきます。(中学2年生で習っていたんですね。フレミング左手・右手の法則、右ネジの法則など懐かしいです。)
電気自動車で言うと、このように電気エネルギーを力学的回転エネルギーに変換するのが、加速時に当たります。
その逆で減速時にはどうなるのでしょう。減速する際には、電気を流そうとしていない状態で、モーターは止まろうとしているのですが、車は惰性で走り続けようするため路面からの反力で車輪を回転させ続けようとする、つまりモーターの外からモーターを回そうとする力学的回転エネルギーが発生します。それによって、電気エネルギーが発生する、発電されることになります。これが回生ブレーキの原理になります。
モーターの種類
モーターの種類は数多くありますが、電気自動車のモーターの種類は、以下の通りだそうです。
現在量産されている電気自動車やハイブリッド車に使われているモーターは、ほとんどが交流同期モーターと言われるものです。例外は米国テスラ社のEVで、交流誘導モーターを搭載しています。
交流誘導モーター
交流誘導モーターの基本原理
交流誘導モーターの基本原理については、こちらの動画がわかりやすかったので引用させていただきます。
交流モーターは、直流モータにある整流子やブラシがないため、耐久性に優れている反面、電流周波数制御が難しいと言う課題があったのですが、IC技術の発達でインバーターが登場してその課題がクリアできてきたそうです。
交流誘導モーターの仕組み
交流誘導モーターの仕組みについては、こちらの動画がわかりやすかったので引用させていただきます。
動作としては以下のとおりです。
・ステーター(外側にある固定子)には3相の巻線があり、それぞれ120℃位相のズレた交流電流を流し、回転磁界を発生させる。その周波数を可変することで、回転速度を制御する。
・ステーターによって発生された回転磁界により、遅れてローター(中にある回転子)に誘導電流が発生する。フレミングの左手の法則により、ローターに回転力が発生し出力軸が回転する。
また、特徴としては、以下の通りです。
・永久磁石不要
・ブラシや回転子が不要(耐久性に優れる)
・位置センサー不要
・自己始動ができる
・高効率(ハイパワー化に対応可能)
・ステーターの回転磁界に比べローターの回転速度は遅い。
(この遅れを滑りという)
・ローターの銅損あり
ちなみに、この誘導モーターは、ニコラ・テスラという科学者(セルビア系アメリカ人)が発明されたと言うことなんです。アメリカのEVメーカーのテスラ社の電気自動車は、交流誘導モーターを使っていると言うことで、社名の由来はここからだったのでしょうか?ウィキペディアで調べてみると(ニコラ・テスラ)やはりそのようで、イーロン・マスク氏はニコラ・テスラの信奉者として知られているそうです。
交流同期モーター
対して、テスラ以外の電気自動車に使われている、交流同期モーターです。
交流同期モーターの基本原理
交流同期モーターの基本原理については、こちらの動画がわかりやすかったので引用させていただきます。
ステーターの回転磁界は誘導モーターと基本的に同じですが、ローターに永久磁石を使っていて、ステーターの電磁石とローターの永久磁石が引き合ってトルクを発生させて回転させます。
交流同期モーターの仕組み
交流同期モーターの仕組みについては、こちらの動画がわかりやすかったので引用させていただきます。
特徴としては、以下の通りです。
・永久磁石を使用
(ロータ表面に貼り付けるのをSPM、内部に埋め込むのをIPMという)
・ブラシや回転子が不要(耐久性に優れる)
・自己始動ができない
(ローターとステーターの磁力の位置ずれが発生し、同期できなくならないように回転数制御が必要となるため)
・位置センサー必要(上記理由で回転数制御が必要なため)
・ステーターの回転磁界の速度とローターの回転速度は同期。
・高効率(ハイパワー化に対応可能)
誘導モーターと同期モーターの違い
改めて、誘導モーターと同期モーターの違いについてまとめた動画がありましたので引用させていただきます。
モーターの損失
内燃エンジンは、数多くの部品があるため色々な損失があります。それに比べて、モーターは部品点数が少なく、機械的な接触部分も少ないため、損失は比較的少ないです。
内燃エンジンが、エネルギー変換効率50%を目指している状況なのに対し、モーターは80%以上は当たり前で、90%以上を目指していますから、損失は格段に少なくて高効率と言えます。
圧倒的な差ですね。
モーターの損失には、銅損、鉄損、機会損失がある。銅損は導線の電気抵抗による損失で、鉄損はコイルの鉄心に発生する損失、機会損失はローターの軸受けなどに発生する摩擦損失が主
さらに高効率を目指して、開発が進められているのです。
モーターの高回転化と弱め界磁制御
モーターの性能を出そうとして高回転化しようとすると、いいことばかりではないのです。モーターのデメリットが顔を出してくるのです。
交流同期モーターのようにローターに永久磁石を用いるモーターには回転が上がるにつれてステーターコイルに逆向きの誘起電圧が発生するという不都合な現象が現れます。これは、モーターとして作動すると同時に、発電機として作動してしまうことを意味します。この働きで生じた誘起電圧はモーター本来の駆動を妨げ、回転にブレーキをかけます。
これは、ステータコイルに流す電流がフレミングの左手の法則で磁力を発生させるのと同時に、その磁力がフレミングの右手の法則で、逆方向の電流を発生させてしまう、この現象が磁力が強くなる高回転域に発生するということです。
誘起電圧を低減するには磁石が作る磁界とは逆向きの磁界ができるようにコイルを流します。これにより磁石の磁界は弱まります。この制御を「弱め界磁制御」とか「弱め磁束制御」と言います。
こちらの動画がわかりやすかったので引用させていただきます。逆起電力の解説は3:42〜、弱め界磁制御の解説は、10:55〜に解説があります。
ただ、そんなに高回転に課題があるのなら、2段程度の変速機をつければいいと思いますよね。コストは上がりますが。実際、ポルシェのタイカンは2段の変速機を搭載しています。
そのメリットについては、こちらの動画がわかりやすかったので引用させていただきます。
この辺りは色々と取り組み方があるのですね。
インホイールモーター
インホイールモーターは、モータ自体を各車輪に内蔵するタイプのモーターで、省スペースやハンドリング性能の向上など数多くのメリットがある反面、乗り心地の悪化や耐久性の確保などクリアすべき技術課題の難易度が大きい技術です。
こちらの動画を参照いたします。
また、以前の記事 現代自動車の【革新的技術 e-Corner Systemとは?】の解説で、インホイールモーターのメリット・デメリットを解説していますので参照ください。
インホイールモーターについては、今後さらに深掘りしていきたいと考えています。
最後に
今後、内燃エンジンに代わり、自動車の駆動力をコントロールする部品の主流になっていくのは間違ありません。
既存の自動車メーカー、部品メーカーのみならず、電気メーカーのような様々なメーカーが凌ぎを削る技術領域になってくると思います。
日本の技術の見せ所。頑張ってほしいと思います。
これからも引き続きウォッチングしていきたいと思います。
[…] モーターの技術【「電気自動車メカニズムの基礎知識」を読んで学んだことと深掘り】電気自動車の技術進化どうなっていくのか? ということに興味が湧き、手に取ったこの本。 題名 […]