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テクノロジー

トラックやバスへの適用【「電気自動車メカニズムの基礎知識」を読んで学んだことと深掘り】

電気自動車の技術進化どうなっていくのか?

ということに興味が湧き、手に取ったこの本。

題名:きちんと知りたい! 電気自動車メカニズムの基礎知識
著者:飯塚昭三
発行:日刊工業新聞社

最初に書いたまとめ記事には、全体的な感想をまとめてみました。

まとめ記事【「電気自動車メカニズムの基礎知識」を読んで学んだことと深掘り】電気自動車の技術進化どうなっていくのか? 在職時は、ハイブリッド車が主流になりつつあるものの、電気自動車を主体として開発するような状況...

今回も、そこから注目した部分に関して、深掘りしていきたいと思っています。

今回は、実は最終回。トラックやバスへの適用についてです。

中小型トラックの電動化は進行中

本書には、中古型トラックに対する電動化の動きが増えてきていることが記されています。

従来はトラックやバスなどの大型車両の電動自動車化は、電池重量が重くなり積載量がその分減ってしまうので不向きとの考え方が強かったと言えます。しかし、最近では大型はともかく、中古型トラックの電動自動車化に積極的なメーカーが増えてきています。

トラックの電動化のメリットと、導入先についてもこう記されています。

トラックの電気自動車化のメリットは排ガス対策の問題だけではなく、エンジン音が静かなことです。(中略)冷凍食品の配送時もエンジンをかけっぱなしにする必要がなくなります。ただ、これら電気自動車トラックはいづれも航続距離は現状100km程度と、長くありません。配送用の小型トラックは1日の走行距離が長くなく、走行ルートもほぼ決まっているなど、電気自動車を導入しやすい面を持っています。

ということで、流通業界におけるラストワンマイル配送でのゼロエミッション化が、中小型トラックを電動化する最大のモチベーションと言えるのです。

本書の中でもいくつかの電動中小型トラックを開発している企業が上がっていました。
・日野自動車
・三菱ふそう
・いすゞ自動車
・ダイムラー・ベンツ
この中から三菱ふそうについて調べてご紹介します。

eキャンター(三菱ふそう)

三菱ふそうは浦和レッズのサポート企業であるという親近感から、この会社の電動トラックを調べてみました。(eキャンター(三菱ふそう)から引用させていただきました。)

コンセプトとしては、以下のように記載されています。

CO2や汚染物質を排出しないゼロ・エミッション輸送、騒音問題の解決。電気による異次元の走行性能と、低振動によるドライバーの負担軽減。燃料費*1とメンテナンスコストの低減。さらに次世代の安全装備を身につけて。運ぶことで、人をつなぐ、社会をつなぐ、そして未来をつなぐ。ロジスティクスの新しい時代が、ここから始まります。

特徴としては、電動化による力強さと静粛性があり、特に市街地での配送業務に適していることを謳っていますね。

バッテリーについては、本書の説明の通り、100km程度の走行距離。

駆動用バッテリーは、370V/13.5kWhの高性能リチウムイオンバッテリーを6個搭載、1回の充電で約100kmの走行を可能としています。充電は、急速充電*1(最長約1.5時間)、普通充電*2(最長約11時間)の両方に対応。急速充電はCHAdeMO™*3に準拠し、公共急速充電ステーションでの充電も可能です。

このeキャンターを、ネットで検索しただけでも以下の企業が導入しています。
・セブンイレブン(25台)
・ヤマト運輸(25台)
・西濃運輸(2台/配送網が比較的短い市川支店に採用)
・イケア(2台/ラストマイル運送をゼロエミッション化するため)
ただし、台数を見ると、まだまだ企業のイメージアップのようにも見えますね。

また、次世代モデルとして、この3月に新型eキャンター(三菱ふそう 新型eキャンター)が発売され、バッテリーの積載量に応じて最大で324kmもの航続距離(国交省審査値)を達成したとのこと。

 

流通業界においても、企業としてのカーボンニュートラルは必達の課題となっていますし、今後どんどん流通業界に電動化が進んでいくことでしょう。

大型のトラックやバスの電動化は課題が多い

大型トラックやバスに対する電動化のモチベーションとしては、「走行距離の長い大型トラックやバスを電動化することによる脱炭素への貢献度は高い」ということだと思います。

また電動化と絡めて、効率よくエネルギー消費するための、バッテリーマネージメントやルート案内などのクラウドサービスも検討されているようですし、課題は多いですが、開発するモチベーションの高い領域だと思います。

しかし、中小型トラックに比べて、大型トラックには解決すべきこんな課題があります。

大型トラックは長距離を走りますから電池もかなりの量を積まなくてはなりません。電池容量が大きいということは充電時間も長くかかるということです。

なので、日本では、この課題解決のために燃料電池が有力視されています。

そこで、日本では大型トラックやバスには燃料電池こそがふさわしいという見方があります。ガソリンスタンドのようにサービスエリアに水素ステーションを設ければいいわけです。水素の充電時間は普通の液体燃料の充填とあまり変わらないくらい短時間で済みます。満充填で走れる距離も電池より大幅に大きいことが期待できます。

トヨタやホンダなどが実証実験に向けて準備をしていると発表しています。最初に言いましたとおり、モチベーションの高い開発領域でもありますし、早期の実現を期待したいと思います。

注目のトピック

このトピックを調べている中で面白そうな話題を二つ見つけましたので紹介いたします。

トレーラーの電動化

こちらの記事(電動トレーラ)で知ったのですが、なんとトレーラ側も電動化する技術があるということ。

欧州大手トレーラメーカーのクローネ社および電動トレーラ技術を開発した独・トレーラ・ダイナミクス(TD)社によって開発中だそうです。

詳細は先ほどの記事を参照いただきたいのですが、個人的に驚きなのは、やはりトレーラー側に駆動力を持つということ。

トレーラはトラックに牽引されていて、トラックとトレーラーはある軸で結合されていて、旋回時はくの字に曲がって曲がっていく。その状態でトレーラー側が駆動力を持つと、例えば直進状態でもよりくの字に曲がる可能性が出てきて直進性が損なわれる課題が出てくる。

トラック側の駆動力とトレーラ側の駆動力の絶妙な配分が必要な技術だなと思いました。4WDの前後配分より難しそうです。

でも、それ以上に圧倒的な燃費向上効果があると踏んでいるんでしょうね。

池袋の10輪EV バス

日本では、大型バスは燃料電池を採用する方向性だということでしたが、小型バスは電気自動車化が進むとのこと。それを知って、池袋で見たバスを思い出しました。

これがその写真です。飲み会に行く途中に見つけて、あまりにも衝撃的だったので慌てて写真を撮りました。

もう、お茶目な感じと、なんと10個ある車輪が目を引きます。で、ネットで調べてみると、こちらの記事(池袋の10輪EV)を見つけました。

このバスは、「イケバス」と言って、なんでも、池袋のある豊島区が地域の将来に危機感を持って、地域活性化のために始めたバス事業なんだそうです。池袋周辺の観光スポットを周遊するんだそうです。

面白いのは、運用面での苦労。時速19kmという速度なので、安全面に苦労したとのことです。大きな交差点の右折禁止、ルートは左回りが基本など。

それにしても、なんで10輪なんでしょうね?エンジニアとしてはそこが不思議なところ。

株式会社シンクトゥギャザーの製品である「eCOM-10」がベースモデルだということで、ホームページ(ecom-10)を調べてみました。

このバスの特徴は、

・ユニークで可愛くて楽しいデザイン
・19km/hでのんびりゆっくり歩行者の視線で街中が良く 見える人にやさしいスピード。
解放感たっぷり 窓ガラスが無いので、いつも景色と一緒。 爽やかな風、自然との一
体感が心地よい。

だそうです。

また、スペック表を見てなんと驚くことに、インホィールモーターで、全10輪駆動だそうです。仕様的にはカッコ良すぎる!で肝心の10輪の理由は、察するにパワーを稼ぐためのようです。インホィールモーター1輪分が1.8 kWなので、出力を稼ぐために個数を増やしているようです。

また、これも推測ですが、上の写真のように曲がっているのにタイヤの切角がついていないように見えるので、左右の駆動力差で戦車のように曲がっているのか?(自動車用語ではトルクベクタリング)と思いました。そうだったら、それもすごい!!

今度、池袋に行って乗ってみようと思いました。実際に乗ってみるとよくわかる気がしますね。

最後に

7回に分けて記事にしてきました、「「電気自動車メカニズムの基礎知識」を読んで学んだことと深掘り」シリーズは、今回で終わりになります。

自分にとって、今回、今後の自動車の電動化に向けた技術動向やメリット・デメリットなどの基礎知識を得られたことは、十分過ぎるほどの成果がありました。さらに、カーボンニュートラルから始まる電動化の動きがどれだけのスケール感があるのか?社会や産業に与える影響を理解できた気がします。

またこの電動化の分野に対しての興味・好奇心がすごく湧いてきました。今後も継続してウォッチングしていきたいと思います。

そして最後に思ったのが、1冊の本を読んでここまで深掘りして理解したのも初めてだったなということ。いい経験になった気がします。

本当に簡潔にわかりやすく説明してくださった、著者の飯塚昭三氏には感謝の言葉を贈りたいです。本当にありがとうございました。

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