韓国 現代自動車から革新的技術が発表されました
今朝何気にyoutubeを見ていると衝撃的な映像をオススメされました。
これが衝撃的な動画
まずは、こちらの動画をご覧ください。
クルマが真横に動いたり、斜めに動いたり、その場をぐるぐる回ったり。もう今までのクルマの常識を超えた動きをしています。すごい!!
しくみはこうなっています
構成に関しても、動画がありましたので引用させていただきます。
具体的には、各輪にこのようなアクチュエータたちが搭載されています。
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パワープラントは4つのモーターに
従来のパワープラント(エンジンミッション)は、各輪のホイールの中にレイアウトされる4つのモータにより置き換えられます。(これをインホィールモーターと呼びます。)
これにより、4輪の駆動力・制動力を個別にコントロールできます。
4つのモーターを車体側に搭載して、ドライブシャフトを経由して車輪にトルクを伝達する方法もあります。ですが、この構成だと
・車体側のスペースを使ってしまう
・ドライブシャフトが邪魔して各車輪の切角を大きく切れなくなる
ために、そうならないためにインホィールモーターは大事な技術なのです。
ステアリング、ブレーキはそれぞれ各輪4つのアクチュエータのバイワイアシステムに
ステアリングシステムは、従来のステアリングシャフトやラックで車輪に機械的に連結されていたシステムから、機械的連結を無くして電気的に各輪を個別に操舵できる4つのアクチュエータのシステムとしています。
これにより、4輪を自在に切角をつけることができます。
またブレーキシステムは、従来のハイブリッド車のブレーキシステムのように油圧式でしたが、油圧を廃止して電動キャリパーを採用しているように見えます。
これによって、4輪個別にブレーキ力を付与することができるため、各々の車輪でモーターの回生量に応じてその分ブレーキ力を減らすことができる、つまり各輪で個別に回生することができます。
これにより、従来のエンジンミッション/ステアリングシステム/ブレーキシステムを削減もしくはコンパクト・軽量化できるようになります。
技術的視点でのメリット
ちょっと大袈裟な表現かもですが、一言で言うと、車両運動、制御の自由度の解放!!!って感じです。
4WDとしての制御性能向上
モーターは、従来のエンジンミッションに比べて、応答性が高く駆動・制動トルクの再現性は高いのです。そのモーターが4輪個々に装備されて個別に制御できることで、路面状況にあったトルクを車輪別に制御することが可能で、しっかりとトラクションを路面に伝えることができます。
トルクベクタリングの進化
トルクベクタリングとは、左右の駆動トルクに差をつけることでヨーモーメントを発生させて、曲がりやすくする機能です。
現在量産されているトルクベクタリング技術は、以下のようなハードで構成されています。
①左右駆動力配分機構を持つデファレンシャルを前軸か後軸に装備(Audi S4など)
②オープンデファレンシャルを持つ前軸、後軸の内輪にVDCでブレーキをかける
③前軸か後軸に、2つのモータを装備する。(例としてN-SXやフェラーリなど)
②は、前軸、後軸両方でトルクベクタリングできますが、VDCアクチュエータを使うため、ブレーキ部品の耐久性やアクチュエータの作動音の問題があります。そのため日常走行で制御するのは困難であり限界域付近に作動シーンが限られます。
①、③は、追加でアクチュエータを装着する必要があり、コスト観点から前軸か後軸に、限定されています。
それが、今回は4モーターシステムということで、前軸と後軸両方でトルクベクタリングが可能なレイアウトになっているのです。
また、モーターでトルクベクタリング制御するメリットとしては、電力消費しない制御も可能です。つまり、内輪を制動トルク、外輪を駆動トルクとすると内輪で回生した電力を外輪の駆動トルクに使えるからです。
ブレーキ配分制御の進化
ブレーキも大幅の進化です。
前後左右のブレーキ配分制御の進化
旋回中は、旋回内輪から外輪に荷重が移動しているため内輪の荷重が軽くなっており、その時にブレーキを踏むと内輪がスリップしやすい状況になります。
従来のシステムは、左右配分ブレーキという機能はなく、内輪がスリップしてABSに入って車両挙動は安定しますが、油圧制御によって挙動がギクシャクします。
それに比べてこのシステムは、前後の制動力配分に加えて左右の制動力も可変にできるため、内輪の制動力の配分を弱めてスリップしずらくしてABSに入りにくくできます。これにより、従来に比べ挙動が安定化してかつ短く止まるようになります。
回生ブレーキの進化
従来の回生ブレーキにおいては、ABSに入ったりすると回生ブレーキを終了してメカブレーキに切り替えるということを行います。理由としては、前輪のみもしくは後輪のみで回生をしていると、前輪なら前輪寄りのブレーキ配分、後輪なら後輪寄りのブレーキ配分になります。前輪回生の場合、雪上などでABSが前輪に介入した場合、アンダーステア挙動(曲がらない)になります。それを防ぐ為に回生ブレーキを終了してメカブレーキに切り替えるのです。(後輪回生の場合は逆でオーバーステア挙動)
それに比べてこのシステムでは、4輪個別に回生ができ理想のブレーキの配分を維持できることから、1輪ABSに入っても挙動が大きく乱れず、他の車輪の回生を継続することができ、燃費という観点でも向上する可能性があります。
ABS /TCS /VDCの制御性能向上
従来の制動時の車輪スリップ(ロック)を防ぐABSや 横滑り防止機能のVDCは、VDCアクチュエータを用いて油圧制御を行います。また、加速時の車輪スリップを防ぐTCSは、車輪スリップに応じてエンジンに対して駆動トルクダウン信号を送りスリップコントロールを行います。ただし、VDCアクチュエータやエンジンは、構造上応答遅れや制御性が悪いという課題がありました。
それに比べてこのシステムは、それらのアクチュエータに比べて、応答性と制御性が優れた4つのモーターを主体に制御でき、そのあと電動キャリパーでブレーキ制御できるため、制駆動時の車輪スリップや横滑り時の車両姿勢の制御をスムーズで繋がりよく制御することができる可能性があります。
車体側の省スペース化
従来、ボンネット内に所狭しとレイアウトされていたエンジンやミッション、デフやドライブシャフトのような駆動部品、ステアリングシャフトやステアリングラックがなくなり、それらの機能が、タイヤ付近の4隅にレイアウトされる形になります。
で、できるだけ4隅に。居住空間や荷室などを最大限に使うことができます。
また、これによって、ホィールベースを最大にすることができて、高速での安定性を最大化できるポテンシャルを得ることになります。
補足としては、そのロングホイールベースのデメリットとして小回り性の悪化というのがありますが、後輪も切れることでそのデメリットを解消できるのです。また、小回りするために後輪を前輪と逆の角度に切る場合の問題として、リアバンパーを擦るということがあります。リアのオーバーハング(リアタイヤからバンパー後端までの距離)が長いとこうなりやすいのですが、リアモーターをできるだけ後ろに持っていき、オーバーハングを減らすことで、この課題を解消できるのです。
重量配分の適正化
前輪及び後輪にモーターを配置することで、バッテリーのL/O次第ではありますが、重量配分を50:50のような理想配分にすることも可能です。
もっというとバッテリーの配置次第で、レーシングカーとして理想的なミッドシップのようにリア寄りの重量配分だとか、フレキシブルにレイアウトできる可能性があります。
これは、エンジン・ミッションという重量物による重量の偏りを、分散できるシステムのメリットということができます。
革新的な車両運動制御のポテンシャル
今までは、前輪が横力を出して曲がるきっかけを作り、後輪がしっかり踏ん張って安定性を保つというのが今までの常識でした。現在の後輪操舵システムのような後輪が切れるとしてもタイヤ角で3度以下レベルの切れ角でした。しかし、このシステムは前後輪と共に90度切れています。
よって今までの車両運動を覆す、革新的な車両運動が実現できる可能性を秘めています。
また、今まで機械的な力の釣り合いで成り立っていたシステムが、全てがソフトウエアによる制御になるので、自由度が高いし、可能性が広がります。
ソフトウエアによる制御により性能構築されるため、モード切り替えでキャラクターを激変することができますし、このシステムだと変化幅が大きく広がるものと思われます。
低速取り回しや緊急回避などのシーンで今までの車両運動の常識を超える動きを実現できる可能性があります。
ユーザー視点でのメリット
技術的視点でのメリットから想像するユーザー視点でのメリットを考えてみるとこうです。
異次元のハンドリング
旋回シーンで、ぐいぐい曲がっていきながらもすごく安定している異次元の走りが実現でき運転の楽しさを味わえると思います。
安心安全な加速減速性能
加速、減速するシーンでも、安定した姿勢、挙動での加速や減速性能が実現できると思います。
スムーズかつ安全な限界性能
雪道などで限界を超えても従来のVDCアクチュエータのように急激に挙動を止められるわけでもなく、なぜか自然に挙動が収まるようになるため、スムーズでコントロールしやすくなると思います。
また、このシステムを用いて緊急回避のようなシーンで、回避性能を向上させるポテンシャルはあります。
自動運転での安心な移動の実現
自動運転時代に効果を発揮します。
・自動運転中にステアリング自体を収納できて、居住スペースが増える。(ステアリングシャフトがないため)
・高速走行で横Gを感じずにスムーズにレーンチェンジすることができる。(後輪を前輪と同じ向きに切ることで斜め移動することができる)
車両のキャラクターの激変
アクチュエータの可動域の広さから、ドライブモードによって車両のキャラクターを激変できるポテンシャルを持っていて、外観は一緒ながら、中身が激変するクルマになる可能性があります。1粒で2度美味しいどころか、何度でも美味しいとかになるでしょう。
低速での取り回し、駐車のしやすさ
最初の動画にあったような車庫入れやUターンのようなシーンでは、圧倒的な価値を発揮しますね。
バレーパーキングなどの自動駐車の技術も発展して、クルマから降りて、ボタン一つであっという間に自動で駐車なんてことになるかもしれません。
技術的課題
メリットの大きさ以上に、技術的な課題も相当大きいと思います。
モーターの対環境性、耐久性の確保
インホイールモーター化に伴い、モーターが足回り側につくことで、雨や砂利道、泥道などにおける対環境性や腐食などの耐久性の確保が課題になります。
ばね下重量増加に伴う乗り心地の悪化
モーターが足回り側につくことで、可動する足回りが重くなり、路面の凹凸を通過する際のタイヤの上下Gが大きく収束しにくくなり、乗り心地が悪化します。
乗り心地の悪化を防ぐためには、減衰力可変ダンパーやエアサス、アクティブサスなどの制御サスペンションの装着が必須になるかもしれません。
真っ直ぐ走らせることの難しさ
従来の車両は、パワートレーンの出力をデファレンシャルと言う部品で、左右にトルクを振り分けて左右のドライブシャフトを経由してタイヤにトルクを伝えています。
このシステムは、その機械的な締結は一切ない状態で4輪独立で制御するので、直線で真っ直ぐ走らせるために、前軸および後軸それぞれで左右差が発生しないように制御する必要があります。左右差があるとその分ステアリングを真っ直ぐにしていても左右どちらかにわずかに曲がっていくようになります。これは結構難しいんじゃないかなと思うんです。
真っ直ぐ止まれることの難しさ
ブレーキも同様。油圧でなく、各輪に電動キャリパーのブレーキシステムなので、電動キャリパーのストローク制御の精度が悪いと左右で制動力の差ができ、左右どちらかにわずかに曲がってしまいます。
制御自由度が多く、統合コントロールすることが難しい
4輪のタイヤの前後力と横力を個別にソフトウエアでコントロールできると言うのは、ソフトウエアによる制御の自由度が格段に広がる反面、じゃいざ冷静に考えると、8自由度?加えて制御サスペンションシステムも考えると、どれをどう制御すべきかアルゴリズム構築が難しそうです。車両運動モデルをベースにした高度なアルゴリズムがないと制御できなくなりそうです。
機械的に接続しないことによるデメリット
今まで機械的な力の釣り合いで成り立っていたシステムが、全てがソフトウエアによる制御になるので、それらを再現するためのロジック構築が難しいと思います。また故障時の考え方が大事になります。
ステアリングインフォメーションの創出
ドライバーは、ステアリング反力からタイヤのグリップ感や路面状況など数多くの情報を得て運転しています。これは、ステアリングシステムとタイヤが機械的につながっているからこその現象です。
今回のシステムは、機械的につながっていませんから、タイヤのグリップ感や路面状況に応じてステアリング反力を擬似的に作り出すための、ソフトウエアのつくり込みと電動パワーステアリングのような機構の装備が必要になるでしょう。
4WDのトルク伝達機構の創出
従来までの4WDシステムは、ペラシャフト/ドライブシャフト/デファレンシャルといった部品で連結されているので、車輪の回転差を抑えるように機械的に駆動トルクを伝達し、安定感を出していました。
今回のシステムは、機械的につながっていませんから、従来までの4WDシステムと同様の機能をソフトウエアで再現する必要があります。
ステアリングシステムの故障時の考え方
従来は、ステアリング→ステアリングシャフト→ステアリングラック→左右のタイヤと機械的につながっていて、ステアリングラックは一つで左右のタイヤを切っていました。電動パワーステアリングの故障でパワーアシストを停止したとしても、すごく重いですがステアリングを切って移動することはできました。
今回のシステムは、機械的につながっておらず、前輪及び後輪にアクチュエータが左右独立に2個、合計4個存在しています。1個壊れても残りの3個を使って曲がることはできます。例えば前輪アクチュエータの1個が故障したら、前輪を切れないようにして後輪のみで曲がるようにするなどの故障時のバックアップモードの検討が必要になりますね。
ブレーキシステムの故障時の考え方
ステアリング同様ブレーキも、従来は故障してアシストがなくなっても油圧経路は残っていて止まることはできます。
今回のシステムは、各輪それぞれ4つの電動キャリパーになっているため、1個壊れても残りの3個で制動することは可能。ステアリング同様、故障時のバックアップモードの検討が必要ですね。
これを誰がどうやって開発していくのか?
今回発表のあった現代自動車の内情はわかりませんが、頭が硬くなっている自動車会社がこれを量産できるのか?甚だ疑問に思えます。
このシステムを開発するための組織体制を想像すると、既成の組織をぶっ壊して新しい組織を作らないとできないのではないか?と思います。
なぜならば、部品の置き換え規模が半端なく、従来の組織分けでやっていくと間違いなく部門間の対立を起こすはずです。部品がなくなって失業する人が続出しそうな革新的な技術といえます。
でも、これだけ画期的である技術なだけに、組織改変して、お金を投じてチャレンジする価値はあるんじゃないかなと思っています。
まとめ
今回は、現代自動車が発表したこのシステムの紹介と可能性について、自分なりに解説してきました。効果、効能については、定量的なものはなく、定性的というかポテンシャルという観点で書かせていただきました。
なにしろこの技術は、制御屋であった自分にとっては期待大であり、自分がもう10歳若かったらチャレンジしたかった技術でもあります。なので書いているうちに熱中しすぎて、気がついたらかなりマニアックな内容になってしまいました。
これから何年かかるかわかりませんが、どこかの自動車会社の若い技術者がわくわくしながら開発していって近い将来量産するのを楽しみに待っていたいと思っています。
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